未来と過去と後悔と
突然、友人はこんなことを聞いてきた。
「なあ、未来って見てみたいか?」
「…未来?」
「そ、未来」
そういう友人には別段変わったところはなく、いつものように淡々と話した。
「…お前は見たいのか?」
「いや、全然」
友人は全く表情を変えずに答えた。
「なんで」
「怖いだろ?
十年後を見たいと思っても、実は自分には十年後がなかったりしたら?」
「………」
「自分の未来が、半年後までしかなかったら?」
「………」
「運悪く、自分が死ぬところをみたら?」
「………」
「嫌なことが待ち構えていたら?」
「…はあ…」
なんでいきなりそのようなことを言うのか、私には見当もつかなかった。
「いやだろ?
そうなる可能性の方がずっと高いし」
「…んで、見たくない、と」
「そ」
「じゃあ、なんでそういうこと聞くんだよ」
「過去に帰りたいと…思うか?」
私の質問に答えず、友人は話を変えた。
「…………過去…?」
「そ、過去」
相変わらず、友人は表情を変えない。
「過去に戻って過ちをなかったことにしたりとかさ、いろんな事できるじゃん」
「じゃ、お前戻りたいの?」
「いや、全然」
友人は即答した。
「過ちがあるからこそ、次にそれを犯さないように出来るだろ?
大きなことで言ったら、過去に戻って原爆を止めたら、今は第三次世界大戦かもしれない」
「はあ…」
「後悔があるから、人生楽しいんじゃないかな?
俺は今、いろんなこと後悔しているよ。
それが、俺が今生きているって事」
「…わけわかんね」
私がそういうと友人は笑った。
「かもね」
「で、なんでそんなこと聞くんだよ」
友人は一拍置いて、答えた。
「そうおもったからさ」
「…お前、変」
友人はまた笑った。
半年後…―
その友人は死んだ。
あっさりと。
車にはねられて死んだ。
分かれ道で、私と別れた直後だった。
そして私は半年前の会話を思い出す。
『十年後を見たいと思っても、実は自分には十年後がなかったりしたら?』
『自分の未来が、半年後までしかなかったら?』
――もしかしたら…
友人は知っていたのかもしれない。
だから私に言ったのだろうか。
確かめることは出来ない。
もう死んでしまったから。
もう居ないから。
もしも…
半年前に戻れるのなら…
私は聞くだろうか?
『未来を見たのか?』と…
聞くだろうか?
あの分かれ道に戻れるのなら…
意地でも友人が行くのを止めるだろうか?
いや…
戻りたくない。
なぜなら、私は…




