ボクユメ6
「ハルキ?」
あんなに忙しいって、まだ大学にいるはずじゃなかった?
バイトだって、7時からじゃん。
目の前のコンビニかた出てきたハルキを見つけたオレは、
声を掛けることも忘れ、その場に立ち尽くした。
だって・・・
『ハルキー、今日もウチ、泊まるの?』
『ダメ?』
『別にいいよ、誰も来ないし。』
え!?どういう事?もしかして、他人の空似?
でも、一緒に居るのって・・・一緒にコンビニから出てきたのって・・・
震える手で、携帯を握った。
その二人の、後姿を見つめながら。
オレに背を向けて、目の前から遠ざかって行くその人から、聞きなれた着メロが流れてくる。
「もしもし、リョウ?」
「ハルキ、今、どこ?」
「んー、ちょっと外。」
携帯から、同じ雑踏が聞こえてくる。
近くを通った、救急車の音まで。
「ん、わかった、またね。」
事実を前に、震える指が一方的に携帯を切った。
冷静な自分の声に、オレ自身が驚いている。
その事に気が付いたハルキが、周りを見回している。
ハルキに見つかる前に、この場を立ち去るしかないだろ、早く!
勝手に走り出した脚は、人込みの中へとオレを隠してくれた。
遠くで名前を呼ぶ声が微かに聞こえたけれど、今は何も聴きたくない。
手に握られた携帯は、電源を切るまでずっと鳴り続けていた。
なんで、なんで、カノジョなんだよ!!
惨めな気持ちを抱えていた。
エイコにあんなエラそうな事いった自分が、馬鹿みたいだ。
オレだって、同じじゃないか、同じ過ちを犯したじゃないか・・・
エイコと別れた、公園のベンチにずっと座っている。
どこに逃げ込んだらいいかわからずに、たどり着いたのはココだった。
電源を切った携帯は、ずっとオレの手の中に握られたまま。
届くはずの無いハルキからの連絡を待っているなんて、馬鹿だ。
好きだから、大好きだから・・・自分だけを見ていて欲しいから・・・
だから、こんなに苦しくて切ない想いを胸に抱かなきゃならない。
ハルキ、アレはヒドイよ・・・マジで。
眼にした事実が、頭の中で何度も何度も繰り返されていた。
コンビにから出てきたハルキ、そしてカノジョ・・・都築さんが。
二人が知り合いだなんて、知らない。
カノジョの家に泊まってた?
今日も、泊まるの?
・・・そうだ、親戚かなんか。
それをハルキに確かめるなんて・・・出来ないよ。
時間だけが、オレを残して過ぎていった。
公園の外灯が、ボンヤリと灯り始める。
ホント、何なんだよ・・・コレ、こんなのアリ?
遠くで・・・雷鳴が轟いていた。
こうして座っていたら・・・
この惨めな気持ちを、洗い流していってくれるんだろうか?
「ねー、どうした、コネコちゃん。飼い主に捨てられた?」
え?
その声に顔を上げると、見たことのある・・・
澄んだアーモンド形の瞳が、目深にかぶったキャップの下から覗いていた。
「きっと雨が降ってくる。ココにいたら濡れちゃうよ、良かったらウチに来ない?」
どこで聞いた事のある、セリフ。
聞き覚えのある、涼やかな声。
その手が、オレの方へと伸びてきたけれど、とっさにその手を払いのけた。
差し伸べられた救いの手の甲に、赤く血が滲んだ。
「あ・・・」
「ん?大丈夫、このくらい。」
「ヨシヨシ。」、そう言って、頭を優しく撫でるな。
でも・・・なんだろう、この感覚。
冷え切っていた胸の中に、血が通う感じ。
「誤解したまま、逃げ出すなよ。」
「・・・。」
オトコのような声で、話し方で、オトコのような身なりで。
いや、どう見たって、こいつ、オトコだ。
目深にかぶったキャップ、洗いざらしのシャツ、汚れたジーンズ。
ちょっと人目を引くのは変わらないけれど、
今、目の前にいるのは、オレの知ってるカノジョじゃなかった。