ボクユメ4
相変わらずハルキからは、メールが無かった。なんだよ、もー。さっき、弁当の後に「なにしてるの?」ってメールしたのに・・・少しぐらい、相手にしてくれたってイイじゃん。電話しちゃおうかな・・・でも、ウザいか?夜はバイトだし、今の時間ならイイよね。
「田辺、オレら行くよー。」
「あ、オレ、電話してから行くから、先、行ってー。」
オレは、なんだか急にハルキに甘えたくなって携帯に電話した。5回、コールが続く・・・切ろうと思った矢先、大好きなハルキのちょっと擦れた低い声が返ってきた。近くに知り合いはいないな・・・
「もしもし、リョウ?」
「うん、今、平気?」
「イイよ、どうした?」
久しぶりに聞いた声に、胸が熱くなる。だって、我慢したんだもん、忙しいって行ってたから。
だから、あんなヤな夢まで見ちゃってさ、妙に不安っていうか落ち着かなくてさぁ。
「だって、メールしても返事こないから・・・」
「ゴメンゴメン、教授が学会近くてさぁ、その準備してんだ。メールは見てるよ。」
その言葉に嬉しくなって、頬が自然にほころんでいた。メールは見ててくれてる、それがわかっただけで満足なんだ、オレって単純。
「うん、わかってる、ちょっとハルキの声が聞きたかっただけ。」
「週末、何してる?」
「えっと、土曜日はクラスのヤツらと風呂行こうって約束してんだ。」
「じゃ、日曜日は空けとけよ。」
あー、失敗。約束入れるんじゃなかった・・・でも、学校の友だちと遊ぶのも大事だ、ってハルキは言ってたもんな。オレが友だちと遊んだって、オンナみたいにやきもちやかないし。
「うん、わかった、またメールするね。」
「返事できないけど、いいか?」
「読んでくれてるってわかったから・・・それじゃあ。」
「りょう。」
「ん?」
電話を切ろうとしたオレを呼び止めたその声に、身体がビクンと震えた。
「好きだよ。」
「うん、オレも。」
ああ、だからオレ、ハルキが好きなんだ。いつもは素っ気無いくせに、自己中にしてるくせに、本当はスゲーオレのこととか気遣ってくれる。今、身体中、幸せ一杯。無意識に、フェンスをギュっと握り締め1人身悶えていた。
「ふーん、田辺くんは・・・ソッチOKなんだぁ。」
「え!」
背後からの急な声に、ビクっと身体が反応した。
だ、だれ?いや、だれって話じゃない、カノジョだ!フェンスを握り締めていた手のひらが、ジットリと汗ばみ冷や汗が背中を流れ落ちる。恐る恐る、声の主の方へと振り返った。
「ハイ、これ。さっき、オカズ食べちゃったじゃない?足りないでしょ、アレじゃ。だから、コレ食べてよ。」
「都築さん・・・」
「サンドイッチ、いらなかったら捨てちゃって。」
「ずっと、聞いてた?」
「んー、電話?えっと、声が聞きたかった・・・ってあたりから。電話の声、漏れてたし。」
まったく悪びれる様子も無く微笑んでサンドイッチを手渡すと、わざとらしくオレの隣でフェンスに寄りかかった。このオンナ、何者?てか、バレた?オレがオトコと付き合ってるの・・・こめかみに、タラリと汗が流れた。
「ま、私も・・・そっちOKだからさ。」
「え?」
「学校じゃ、ビアンだって思われてるし、それもアリかなーって。」
「バイなの?」
「そうかもね、よくわかんないけど。」
やっぱ、やっぱ、変、この子。オレが惹かれたのって、コレだったのかもしんね。カノジョが持ってる、独特の匂いっていうか、いや自分と同じ匂いってやつ・・・人は見かけによらないってこのことね。
そんなことより、オレの秘密がバレちゃった・・・どうしたらいいの?
「なんか、不安?」
「だって・・・」
「そういう話って、個人的なことじゃん。私みたいに、知られてるヤツもいるけど・・・その煩わしさってわかってるし。私を信用しろ、とは言わないけど。」
「うん・・・」
不安だよ、そりゃ。不安で胸が一杯。さっきまでの幸福感はどこへやら、カノジョに、そうカノジョにバレたショックで、オレの頭の中パニック状態。
「ほらほらー、そんな捨て猫みたいな情けない顔しないの!」
「え、今・・・なんて・・・」
「捨てられた仔猫みたいだよ、田辺くん。なんだったら、拾ってあげようか?」
うわぁーーーーー、あの夢って、これのこと??
すっかりパニくってるオレを面白そうに見つめて、カノジョは言った。夢の中と同じアーモンド型の眼が、じっとオレを見つめている。でも、夢の人は絶対にオトコ、見間違えるはずもない・・・それに、声はもっと低かったもん。
「じゃ、エイコに見つかったみたいだから、行くね。」
2メートル先に、仁王立ちのエイコ発見。
ひどく誤解されてる気がするんですが・・・オレとカノジョは、まだなんの関係も無いぞ!
そう言ってやりたかったけど、この口から出た言葉は・・・
「都築さん、放課後、ヒマ?」
「学習室にいるかな。」
カノジョは苦笑してそう言うと、エイコにがっちりと腕を取られて行ってしまった。
なんか、スゲー嫌なオンナに捕まってないか?カノジョ・・・可哀想に・・・なぁ。
カノジョの不幸に同情しながら、エイコの強引さには笑うしかない。
エイコに見つかったらコワイけど、オレは、もう少しカノジョと話してみたいと思っていた。