ボクユメ3
うわぁー、すげー気まずい。
何がって、盗み見てたのバレバレじゃん。オレが何組かバレバレだし、後で呼び出しとか無いことを祈るって感じなんだけど・・・待てよ、別に自分が悪い事してたわけでなし、何ビビッてんのよ。相手、オンナだし。挙げるとしたら、カノジョの存在意識してた自分の浮気心ってところ。
それにしてもビックリだよなー、エイコとそんな関係なんだ、カノジョ。
趣味悪いぞ、オイ。
オレは、むず痒くなった頭をボリボリと掻いた。
「田辺ぇー、昼、上で食べね?みんな行くって。」
「あー、行く行く。」
5分早く終わった、生物の授業。クラスの友だちに誘われて、ガーデニングされた屋上へと向かった。
各校舎の屋上を緑化して、生徒に開放してくれてるところ。ま、高く張られたフェンスはいたしかたない。
他のクラスの授業は続いていたから、オレらは流水脇の一番イイ場所に陣取る事ができた。
「なんか、金魚、デカクなってね?」
「うわ、デカ!みんなエサやりすぎなんじゃね?」
10センチ位に大きくなっていた金魚は、オレらが祭りの時に金魚すくいで取って来たやつだった。
案外、ウチのクラスって仲良かったりすんだよな。みんなで祭り行ったり、映画行ったり、バーベキューしたり。来年は持ち上がりだから、余計に仲良くしなきゃって気もしたりする。
この週末も、何人かで風呂入りに行く約束していた。
「さっき、授業中にさぁ・・・」
と、オレが弁当を広げながら、クラスのヤツにエイコの話をしようとした矢先・・・例のカノジョが、オレの視界の中に、突然現れた。
ヤバ・・・とっさに、口をつぐんで視線を落とす。き、気が付きませんように・・・けど、カノジョは真っ直ぐにコチラに向かって歩いてくる。あー、オレらの前で立ち止まって・・・ヒィィ。
「ノリ、かくまって!」
「なにぃ、ミナミどうしたのぉー、もしかして・・・アイツ?」
「そっ!いい?」
隣でメシを食っていたクラスのノリに、カノジョは後ろを気にしながら拝むように頼んだ。
オレなんてまるで眼中にないかのように、急いで流水の後ろに身を潜めていた。それを更に隠すかのように、オレらがガードするわけね、納得です。
「田辺ぇ、もう少し後ろ下がってあげてよ。」
「あぁ、うん。」
ノリはテキパキとクラスの連中に指示して、カノジョをかくまう手はずを整えた・・・のが早いか・・・
出た!エイコ登場だぁー。
「ねー、田辺ぇーミナミ来なかった?」
「はぁ、だれ?」
エイコ、なんでオレなんだよ!オメーの知ってるヤツは他にいんだろ。高橋とかミキとかのが、知り合いなんじゃねぇの?クラスのヤツらの顔に、一瞬、緊張が走っていた。
オマエら、ちゃんとフォローしろよ!
「ウチのクラスの都築ミナミ、知ってるでしょ。一番キレイな子!」
「あー、髪、短くて背の高い子?」
少しイライラしたように腕組みしながら、エイコはオレらの顔を見回した。
もしかして、バレてるか?
「そう、こっち来なかった?」
「いや、見てないけど・・・来たの見た、ノリ?」
オレがノリに振ったのが・・・まずかった?
ノリは、急に立ち上がって、エイコにツカツカツっと詰め寄った。
アララ・・・
「アンタさ、勘違いしてんじゃない?
ミナミが、アンタなんかにマジで興味持つわけないじゃん。
ミナミだって迷惑してんだから、しつこく付きまとうの止めなって。」
なんでよ、そこまでノリが言わなくても。
もしかして、いわくアリ?この二人って・・・怖ぇー。
「アンタに何がわかんの!ほっといてよ!!」
エイコは、キッとオレを睨んで・・・なんで、オレよ!
スゲー悔しそうにきびすを返すと、屋上から走り去った。
その場に異様な緊張感が漂う・・・うわぁ、何よこの雰囲気・・・
事情を知ってるらしい数人が、コソコソと何かを話していた。
「ミナミ、行ったよー。」
今さっきとはうって変わって、明るい口調でノリは言った。
「サンキュー、ノリ、助かった。
もーさー、毎日、あんなじゃん、キツイんだよねぇ。トイレにも1人で行けないんだよ。
さっきの体育のときもさぁ、ね、タナベくん?見てたでしょ、あんなだもん。」
「う、うん・・・」
どう、返答すればいいってんだよ!
カノジョはオレの隣にドカっと腰を下ろして、軽快に話をする。オレの気まずさなど、お構い無しに。カノジョってこんなキャラだったんだ・・・そっちのがビックリ。
「ミナミ、エイコには気をつけた方がいいんじゃん?」
「んー、わかってる。」
「アタシはさぁ、アンタのことわかってるつもりだけど、アイツはわかってないじゃん。」
「んー、出来れば・・・わからないで欲しいかな。」
アハハハって笑う数名の女子・・・なに、なに?やっぱわけアリなの?ちょっと気になったりしてる。
ふっとカノジョが動いた時に薫ってきた紅茶のような香りが、オレの鼻腔をくすぐる。コロン?ほっとするような、そんな香りだった。エイコもこの香り、嗅いでたんだな・・・さっき。
「ミナミ、お昼は?」
「あ・・・まだ・・・ノリぃ、ちょっと頂戴♪」
遠慮なく手を出してみせるところ、ちょっとカワイイかも。
ホカのクラスに混じって昼メシ貰うってのも、なんかオカシイかも。
国立コースのくせに、この子、ちょっと変わってるかも。
「しかたないなぁ、オニギリ1個あげる。ほら、田辺ぇもカラアゲあげなよ。」
「う、うん、ハイ。」
「サンキュー、田辺くん。」
すっかり名前憶えられちゃったって?さっきまでの気まずさが消えて、オレは案外居心地よく弁当を食べ始めていた。すぐ隣にカノジョが座ってるのも、なんか嬉しいし・・・ノリのお陰で知り合いになれたのも、ラッキーって感じ。
だって、オレ・・・前から少し気になってたんだよね、この子のこと。