ボクユメ1
夢だ。
絶対に、コレは夢。
それも、絶対フツーの夢だから、大丈夫だって、絶対、そんなことあるわけ無いから・・・
夢の中で、ハッキリと自分の意識を自覚しながら、教室の机で涙している、自分に言い聞かせる。
しかも、授業中だぜ、オイ!古典かよぉ・・・イツだっけ、古典・・・あぁ、だからコレはただの夢だから大丈夫、心配すんなぁ。
でも・・・夢でも、あんまりだよ、授業中にこんなの。
いきなり鳴ったケイタイのバイブ。
メール・・・ハルキからだ。自分からメールなんてしないのに、昨日のがよっぽど良かったのかなぁ。
夕べのHを思い出してニヤケながら、その無題のメールを開けた。
『女できたから、リョウとは別れる。』
「え! なに、コレ!!」あ・・・なんか、コレ夢だ、叫んだのに誰一人気づかない・・・だから、いつものように夢だってスグにわかったけど、スゲーショックなんですけど。
マジ?ハルキ、いくら夢の中でも自己中すぎない?いや、現実のハルキはもっと自己中だな。
夢の中の授業は淡々と続いていて、クラスのヤツ等誰一人としてオレの様子に気づいていない。
そうだよ、夢だもん。
今ココで大泣きしたって、誰も気が付かないし、恥ずかしくもなかろう。
泣いちゃえ!
『ハルキのバカヤロー、酷いよメールで別れ話なんて、オマエなんか大嫌い!
ばかばかばかーーー、大好きなのにぃ!もっともっといっぱい一緒にいたいのに!』
泣いて泣いて、鼻水垂らして激しく叫んでんのに・・・やっぱ、誰も気が付かない。
それはそれで、ちょっと悲しいかも・・・「どうしたの?」って声も無しかよ。
あーぁ、なんか泣き疲れちゃった。
夢だってわかってたって、心の傷は相当なもんだ。本当にハルキからこんなメール来たら、死んじゃうかもしんない。オレは大きなため息と共に、机に突っ伏していた。
窓の外に広がる暗い雨雲・・・オレの心を表現してんだな、きっと。あと少しで大粒の雨が降ってくんだろう。無理矢理起きちゃおうかな、でも、そしたら目覚めが悪すぎて1日憂鬱になちゃうもんなぁ。少しはハッピーに転換していってほしい。
『ねー、どうした、コネコちゃん。飼い主に捨てられちゃった?』
え?急な声に顔を上げると、どこかで見たことのある、見覚えのある・・・澄んだアーモンド形の瞳が、目深にかぶったキャップの下から覗いていた。だ、誰だっけ・・・
『きっと雨が降ってくる。ココにいたら濡れちゃうよ。良かったらウチに来ない?』
どこで聞いたんだろう、聞き覚えのある透明感のある涼やかな声。
たぶん、学校のヤツ?でも、こんなカッコイイヤツいたっけ?そんなヤツいたら、見逃すはずないし・・・その手がオレの身体を持ち上げ、その腕に優しく抱いた。
ん?オレ、仔猫になってる?「あんた、ダレ?」って一生懸命叫んでも『ミャーミャー』鳴いてるだけなんだもん。本当、夢ってオモロイ。落ちないように踏ん張ったら、オレの爪がその人の肌に少し食い込んだ。「ゴメン、痛かったよね。」って謝ってもネコ語だけど。
『ん?大丈夫、このくらい。』
そう言って、その人はオレの頭を何度も撫でたんだ。