Ⅰ 彼女×ピクニック=手
黒side
「はい、黒さんお弁当をどうぞ」
そう言いながらシンプルな風呂敷に包んであるお弁当箱を渡してくれたのはおれの彼女、天音夢羽だ。
おれたちは付き合い始めて一年、二回目のピクニックに来ている。まぁリア充の仲間入りは果たしたということだ。
きれいな銀髪の美少女の笑顔は空高くにある太陽よりも輝いていた。
「本当におれもついてきてよかったのか?」
「何言ってんですか、お義兄さん」
本日同じせりふを8回繰り返しているこの人は夢羽の三つ上、十九歳の天音龍也さんだ。
ピクニックには前も誘ったのだが、ついてきてくれたのは今回が初めてだ。
おれてきには龍也さんはおれに天音流剣術を教えてくれた兄弟子だから一緒にいろんな思い出を作りたいと思っているんだけどな。
この二人は家族を亡くしたおれを立ち直らせてくれた人たちだ。
そして本当の家族のように接してくれる大切な人。
夢羽はもちろん、いつか龍也さんも守れるくらい強くなりたいと思っている。
「そんじゃあおれ、ちょっとトイレいってきます」
そういったときだった。
地面が盛り上がり、光り輝く大きな手が出てきた。
その手はちょうどおれの反対側にあったため夢羽と龍也さんを捕らえる。
「夢羽!!お義兄さ「来るな!!!」
駆け出していたおれの足はお義兄さんの声によって止められる。
「黒くん!大人を呼んで来い!君一人では無理・・・」
全部言い終わらないうちに二人を束縛している手は地面に戻っていった。ポッカリ大きな穴があいている。
「それは無理な頼みです、お義兄さん」
おれは穴の中に飛び込み、落ちていった・・・