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第04節 シースーの真実 ~板前のベクトルが違う怒り~

 馬車に乗ってシースーの店にたどり着いた三人。

 子爵家の馬車がシースーの店の前に……すると、平民達がざわめく。


「あれ、マルボロ様じゃねぇか?なんでこんなとこに……」

「シースーの品評会か?」「ガチ視察⁉」「マジの視察か?」


 そんな平民達を無視して、横開きの扉をくぐりシースーの店に入る。


板前「へい、らっしゃい!」

マルボロ「今日はマルボロ・ワサビ子爵令息としてではなく、ただのマルボロとして接してくれ」

板前「坊ちゃんがそう仰るなら……」


 と言いつつ、板前の緊張は抜けきっていないようだ。


レアナ「本格的な寿司処……シースー店ね」

リュカ「ああ、江戸時代では、これが当たり前だったのかもな」

板前「さて、どうします?三人前を店内で食っていきますか?」

レアナ「それでもいいんだけど、まずは洗い流している『草』を、ちょびっとシースーに挟んで欲しいの」


 板前の緊張はどこに行ったのか、目を吊り上げて、充血させながら静かに言う。


板前「何を言ってるんですかお嬢さん。シースーにあんな雑草を入れるとか……喧嘩売ってんのか?」


 下手に怒鳴られるより、低い声でこんな事を言われる方が遙かに怖い。


リュカ「レアナ落ち着いて!まずは『草』の味見から始めろ」

レアナ「そうね、ごめんなさい。まずは洗い流している『草』を、すり下ろして見せてくれないかしら」

板前「酔狂な嬢ちゃんだな?あんな魚の新鮮さを保つだけの雑草の味なんかに興味をもつだなんて」


 そうして、板前が微妙な顔をしながら『草』のすり下ろしたものを、小皿に載せて出した。


レアナ「どれどれ……あれ?なんかワサビっぽくない」

板前「おい、嬢ちゃん不敬だぞ!ワサビ子爵とその辺の雑草を一緒にするんじゃねぇ!」


 リュカとレアナは、怒声にビクッとするが、僅かに立ち直りが早かったのはリュカだった。


リュカ「ここでワサビといえば、ワサビ子爵のことだから!少なくとも公の場で使うな」

レアナ「そうね……失言だったわ。だけど、なんで鼻にツーンと抜けるような刺激が少ないの?」

板前「だから言ったろ?こんな雑草に何を期待しているんだ?寿司にこんなの挟んでも、味が落ちるだけだぞ」

レアナ「何が悪いのかしらね?あ、草だからか!」

板前「嬢ちゃん、さっきから『草』だって、繰り返し言ってるだろ」


 落ち着きを取り戻したレアナは、板前に食い付くように言う。


レアナ「そうじゃないの、根っこ!根っこはない⁉」

板前「ああ、あんな雑草の根なら、ゴミ捨て場にたんまりあるぞ。まさか食べたいとか言わないよな?」

レアナ「ちょっと、その根っこをくださいな?」

リュカ「おい、ちょっと落ち着け」

レアナ「十分落ち着いているわよ!少なくとも根っこ見ないと納得できない!」


 自称落ち着いているはずのレアナの頬は、興奮で真っ赤に染まっていた。


マルボロ「板前さん、もしよければだが、彼女に少しだけ根っこを分けてくれないか?」

板前「まあ、あんなゴミならいくらでもくれてやるけどよ、食べたりするなよ?頼むからな!」


 そんなこんなで、未だ肝心のシースーすら食べてない三人であった。


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