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第18節 汁の入れ替え大作戦 ~同棲より結婚がいいよね~

 リュカとレアナは頭を抱えていた――


レアナ「いや、マジでこれどうするのよ」

リュカ「食べ比べるって言ってしまったからな?せめて、なんかしらの結論を出さなきゃいけないだろう」

レアナ「ねえ、もう名目を変えましょう?」

リュカ「どういう方向で?」

レアナ「うどんと蕎麦の麺だけを準備させて、汁は私たちが準備する、という体を取る」

リュカ「体、とな」

レアナ「実はうどんには蕎麦の汁を使い、蕎麦にはうどんの汁を使う!」

リュカ「安易だなぁ。っていうか、関東と関西が聞いたら激怒するぞ、そもそも上手く行くのか?」


 しかし、レアナは知ったことかとばかりに言葉を続ける。


レアナ「どっちが美味しいかじゃないのよ!要するに『どこまで許容できるか』なの!」

リュカ「まさかの寛容力勝負⁉もう完全に食の宗教戦争じゃんかそれ!カレー侯爵領を思い出した……」

レアナ「普通に通用すると思うわよ?そうして食べ終わったところでネタバレ」

リュカ「うわぁ、悪女だ!思いっきり騙そうとしてやがる」

レアナ「嘘には二種類あるのよ……人を傷つける嘘と、人に優しい嘘」

リュカ「俺から見ると、明らかに人を傷つける嘘なんだけどなぁ⁉」


 リュカはツッコミを入れるが、レアナはどこ吹く風だ。


レアナ「まあ、それでダメならさ……ソバ男爵とウドン男爵の同意書は諦めて、二人で同棲しましょ?」

リュカ「……それもいいかもな。ってか平民生活なら、もう一生分の金貨袋、だったか?」

レアナ「貴族の生活はさすがに無理よ?だけど平民水準なら楽勝、お釣りがくるわよ」


 リュカは、覚悟を決めて真顔で言う。


リュカ「……でも、同棲は嫌だな。その時は結婚しようレアナ!」

レアナ「ひゃうっ!いきなり何を言い出すのよ!」

リュカ「同棲も結婚も大差ないだろ、どうせやることはやる関係だし」

レアナ「~っ!もう、バカッ!」


 レアナはリュカの胸をポカポカ叩いたが、顔は真っ赤で、しかしちょっとだけ嬉しそうだった。

 そして、同棲の話は有耶無耶になり、ソバ男爵とウドン男爵に「こちらの提示した蕎麦とうどんの両方に納得がいけば和解する」という約束を取り付けた。


レアナ「しかし、問題は汁の調達方法ね」

リュカ「駄目元で、ナットウ男爵に聞いてみるか?」

ナットウ男爵「お呼びですかな?」

レアナ「きゃっ!」

リュカ「うおっ!」


 唐突なナットウ男爵の登場、すなわち貴族が馬車に首を突っ込んできたのだから、驚くなと言う方が無理な話だ。


ナットウ男爵「なんでも、蕎麦の汁とうどんの汁を入れ替えるという、大胆な作戦を立てられたそうで」

リュカ「どこから漏れたんだそれ!」

ナットウ男爵「はっはっは、うちの諜報……じゃない、影がたまたま耳にしまして!」

レアナ「全く隠せてないわよ!影の諜報でしょ!」


 ナットウ男爵は目を泳がせながら言い訳する。


ナットウ男爵「気のせいです、私の影が聞いただけですからな。で、ご注文の品をお届けに参りました」

リュカ「注文してねーけど、すっげー助かる!」

レアナ「お代はいかほどで?」

ナットウ男爵「はっはっは、ワサビ子爵領の寿司処で、納豆巻きが受け入れられたので、その利益と相殺させていただきました。こちらが差額となります」


 そうして、また一つ、金貨入りの革袋が増える。


リュカ「(これで合計金貨袋五個か……マジで銀行欲しいな、これじゃまるで株主優待だぞ)」


 そして大量のうどんの汁と蕎麦の汁が届けられた。

 圧巻の量である。


レアナ「ナットウ男爵家の影、凄いわね」

リュカ「いや、これはナットウ男爵がヤベぇよ……」


 なお、これで二人の資産は日本円換算五億円である。

 貴族生活をしても生涯余裕の金額である。


リュカ「さて、適正な調理がわからないな」

レアナ「そんなの命律端末でマギシステムに聞けばいいじゃない。あ、チカは呼ばないでね!私の……」

チカ「やあ、兄くん。呼ばれたような気がしたが、ノイズが酷いな」

レアナ「チカ、あなたなんで命律端末の常識を毎回軽々と破壊するのよ!」

チカ「ん?また、なんかノイズが酷いな、チッ」

レアナ「また舌打ちしたわよコイツ!」


 レアナは沸点が低いなぁ、と暢気に思いながら、リュカはたしなめた。


リュカ「チカ様、どうかレアナをあんまり刺激しないでさしあげろください」

チカ「兄くんの頼みなら仕方ない、こちらでノイズキャンセリング処理をしよう」

リュカ「チカ様、それは火に油をそそいでいます!」

チカ「……だって嫌なのだよ、兄くんが他の女性と親しくしている姿を見るのは!」

レアナ「やっぱりわかってやってたのね!」

チカ「……」


 それは、AIらしからぬ、言葉を失った『沈黙』だった。


リュカ「無視しないでさしあげろください!」

チカ「……兄くんの頼みを無碍にしすぎると、嫌われる可能性がある。仕方ない。レアナ、よろしく」

レアナ「名前を呼ばれたけど、呼び捨て⁉」

リュカ「さて、本題だ、このうどんの汁を蕎麦に、蕎麦の汁をうどんに使うには、どうすればいい?可能な限り手を加えず」


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