第16節 納豆を食べられるナットウ男爵 ~納豆巻きやべぇ~
夕食では、イネと納豆、ミーソ汁、漬物が振る舞われた。
リュカ「思いっきり日本食だ……美味い」
レアナ「納豆に醤油ってのが、これまた憎いわね」
ナットウ男爵「おや、ワサビ子爵のところにいたと聞いていたので『ムラサキ』と呼ぶかと思ったのですが、醤油という呼び方をご存知とは?」
レアナ「あ、あはは、マギで予習してきたのよ(汗)」
ナットウ男爵「ところで聖人様、『にほんしょく』とはなんでしょうか?」
リュカとレアナは、冷汗をだらだらと背中に流していた。
リュカ「う……夢の中で見た国の食事にあまりにそっくりで、口に出してしまったのです」
ナットウ男爵「さすが聖人様、夢の内容まで詳細に記憶なされているとは!しかも、ナットウ男爵領の貴族食に近い国とは興味深いですね」
レアナ「あ、そうそう、ワサビ子爵から海藻を輸入してみたらどうかしら?最近のワサビ子爵領で流行ってるのよ、海藻入りミーソ汁!」
リュカは内心「ナイス!レアナ!」と思ったのだった。
そうして、リュカはレアナより早く食事を食べ終えた。
リュカ「ごちそうさまです、では僕はこの辺で」
リュカが席を立とうとすると、ナットウ男爵に呼び止められた。
ナットウ男爵「あ、最後に一口でいいので、納豆巻きを食べていきませんか?」
レアナ「え、納豆巻きまであるの⁉」
ナットウ男爵は得意そうに言う。
ナットウ男爵「レアナ様の予習を若干上回れたようで、私も少し鼻が高いですな」
リュカ「ヤバい、納豆巻き食べたい!一口じゃ足りない!」
レアナ「私もよ。納豆ご飯も美味しかったけど、納豆巻きは別腹!」
リュカ「納豆巻きはデザートかよ?」
レアナ「納豆巻き、一人前用意して!リュカと分けて食べるし、残りは私が全部食べるから!」
ナットウ男爵「落ち着いてください聖女様、おーい納豆巻きを持ってこい!」
そしてメイドによって運ばれたのは、今までの食事量を大幅に上回る納豆巻きだった。
リュカ「(……え、これ、軽く三十人前はありそうだ)」
リュカの目には、淡く青白い光を纏ってるように見える。
リュカはまたもや被ばく恐怖症に陥る。
レアナ「さすがに、この量は私にも無理よ」
リュカ「俺だって無理だ」
ナットウ男爵「私はここからが本番でね、好きなだけ食べてください……皿は分けた方がいいかね?」
レアナ「いえ、大丈夫です」
リュカ「では一口……」
その納豆巻きの味は、尋常ではなかった。
リュカ「おい、レアナ、先に納豆巻きの方を食べてみろ!驚くぞ!」
レアナ「なによ……わかったわ一口だけ、って何これ美味っ!」
ナットウ男爵「お気に召してくれたようで何よりです。そちらの食事は前菜に過ぎないので、残してくださって結構ですよ」
レアナ「なんかナットウ男爵の納豆好きの理由が、理解できてしまったわ」
ここで、リュカが大切なことに気づく。
リュカ「ってか、このご飯は、ワサビ子爵領の寿司と同じですよね?」
そう、この納豆巻きには寿司酢のイネが使われていたのだ。
ナットウ男爵「さすが聖人様!そうなんですよ、こんなの邪道かもしれませんけどね?ワサビ子爵領で寿司を食べた時に感激して、密かに店主に教えてもらったのです」
レアナ「いいえ、断言するわ。これ、ワサビ子爵と提携して寿司処に出した方がいいわよ」
ナットウ男爵「あの寿司処で、ですか?」
レアナ「ええ、これは寿司処に絶対合います!」
リュカ「レアナに同感ですね、この本格的な味。邪道なんかじゃ全然ない!むしろ王道!」
しかしナットウ男爵の顔色は冴えない。
ナットウ男爵「そこまでですか?しかし、ワサビ子爵に打診するのも怖いな……」
レアナ「私から推薦状を書くから、それをワサビ子爵に送って!」
リュカ「ちょっと待てレアナ!その推薦状には、俺もサインをする!」
こうしてナットウ男爵とワサビ子爵の同盟は、より強固になったのだ。
元々、ナットウ男爵はワサビ子爵の諜報を請け負っていたのだが、それはさておき。
当然ながら、リュカは『聖人認定同意書』にサインを貰い、またしても革袋一つの金貨を手にしたのだった。
ナットウ男爵「発酵食品で何か困ったら、いつでも頼ってくれて構わないよ。もちろん聖人聖女予算も十分に積み立ててあるが、幾らか必要か?」
リュカ「いえ、聖人聖女予算は結構です!」
レアナ「っていうか私たち、金貨が貯まる一方で全然使ってないわね」
リュカ「これで、金貨袋四つだぜ……どうするんだ、これ」
レアナ「もう平民生活なら一生暮らせそうね?さらに聖人聖女予算まで各領地で積立でしょ」
日本円換算で合計四億円相当である。
レアナも大概ズレているのであった。
ちなみに、大量の納豆巻きはナットウ男爵が、全て美味しくいただきました。




