第13節 カレー侯爵領からの旅立ち ~命律端末ゲットだぜ~
リュカとレアナは、なぜかカレー侯爵に数日留まるように言われている。
レアナ「何なのかしらね?毎日、美味しいカレー食べられるから……文句はないんだけど」
リュカ「そうだよな、スタンプラリーの意味じゃ……今回、完全に失敗だったしな」
レアナ「リュカ?いい加減ハッキリ言うけど、貴族のサイン集めをスタンプラリーとか呼ぶのは不敬よ?」
レアナは呆れながら言うが、リュカに全く反省の色はない。
リュカ「まあ、スタンプラリーの旅もこれで終わりだから、今のうちにカレーを味わっておくか。これから収入をどうしよう」
レアナ「そうね、どうすればいいのかしら?あ、言い忘れてたけど、今のリュカに借金はないわよ?」
リュカ「そりゃまたどうして?」
リュカは思わぬ話にキョトンとする。
レアナ「ワサビ領での稼ぎがあるでしょ、あれは山分け扱いだし、リュカ自身は一銭も使ってないじゃない。むしろ、今のあなたは小金持ちよ」
リュカ「そうかもしれないけどなぁ?レアナは聖女予算を使いながら、各地を旅すればいいが。俺は金がないぞ」
レアナ「……まだ、わからないわよ?」
そこに、ノックの音がした。
応えると、いつもの汗だくをハンカチで拭っている、カレー侯爵だった。
今日も見事にテカっている、カレー侯爵の頭部。
カレー侯爵「いやはや、長い間お待たせして申し訳ありませんでした」
レアナ「いえ、こちらも毎日、美味しいカレーをご馳走になりましたし」
リュカ「お世話になりました、カレーの代金は……」
カレー侯爵「いやいやまさか、聖人様からお金を受け取るなどとんでもない、ただのおもてなしですよ」
カレー侯爵は慌てて言う。
リュカ「聖人様?」
カレー侯爵「さて、本題に入りましょうか、掛けてください」
部屋のクッションに、カレー侯爵と向かい合わせに座る。
リュカとレアナは、隣り合って座っている。
カレー侯爵「今までお待たせしてしまったのは、今回の聖人様聖女様のご活躍による、経済活性化の影響算出に時間が掛かってしまったためでございます」
リュカ「レアナはグリーンカレーで活躍したからわかりますけど、なんで僕まで?」
カレー侯爵「お忘れですか?緑黄色野菜サラダとドレッシングの功績を」
レアナ「そうよね、緑黄色野菜サラダの提案はリュカのものよね。っていうか手作りドレッシングとか、女子力が高いわね?」
リュカ「大した事はないさ、マヨネーズに一時期ちょっと凝ってただけだからな。それにちょっと合わせればできあがり」
レアナ「まさかのマヨラー!」
カレー侯爵は、更に続ける。
カレー侯爵「何より驚いたのは、命律端末を超えるほどの、適切な提案をなされたことです」
リュカ「いや、むしろご迷惑をおかけしたのでは?」
カレー侯爵「それがだね、私も緑黄色野菜サラダを食べ始めてから、体調が少し良くなったのですよ。領民達もです!」
レアナ「よかったじゃない、ちゃんと功績を認めてもらえて!」
カレー侯爵「ああ、お預かりしていたこちらをお返ししますね」
そうして、手渡されたのは『聖人認定同意書』しかも、カレー侯爵のサイン入り!
カレー侯爵「ああ、そしてこれが……妻が所持していた命律端末です。聖人様にご利用いただけたら、きっと妻も喜ぶでしょう」
リュカ「そんな……奥さんの形見とも言える端末は」
カレー侯爵「ああ、誤解を招いてしまったね。妻はカレーに情熱を傾ける私に愛想を尽かし、駆け落ちして異国に行ってしまったのだよ、きっと命律端末は現地で再調達しているでしょう」
カレー侯爵は「たはは……」と笑っているが、笑い事じゃないとリュカとレアナは思う。
リュカ「そういう事情でしたら、遠慮なくいただきますね」
レアナ「ねえ、もしかして、また自称妹が出てくるんじゃない?」
リュカ「それは、あとで試してみよう。やった!これでもう俺は、穢魂者呼ばわりされる恐れもなくなる!」
レアナ「案外、気にしていたのね」
カレー侯爵「さて、経済活性化の影響算出の結果、健康と平和による影響は多大である予測がなされました」
そうして、メイドが持ち込んできた革袋は、ワサビ邸で受け取ったものと同じサイズが二つ!中身は当然金貨だ。
カレー侯爵「まあ、マギ様による現時点での収益算出なので、更に増えることもありましょうが、それは聖女予算の方に積み立てておきますね。ああ、カレーは長期保存には向かないので、イネと卵を馬車に補充しておきましたよ。カレー領でもカレーに卵入れる派がいましたからね。今やドレッシングの材料として、更に税収は増える見込みです」
リュカ「何から何までお世話になります。ほら、レアナもお礼を」
しかし、レアナは急に表情を引き締めて言う。
レアナ「聖女予算はありがたく思います。しかし、聖人予算という仕組みは無いのでしょうか?」
カレー侯爵「ああ、その件ですか。今まで聖人様に該当するお方がいらっしゃらなかったので、聖女予算と呼称していましたが、今後は聖人聖女予算と改めるように、手配しておきますね」
そして、その旨を記したワサビ子爵宛の手紙をカレー侯爵は記し、メイドに渡す。
カレー侯爵「ワサビ子爵は我ら派閥の中では、爵位とは裏腹にナンバーツーなんですよ。恥ずかしながら私が派閥の長をやっていますが」
レアナ「へー、ワサビ子爵って、ただの猫好きじゃなかったのね」
リュカ「ってか、ワサビ子爵領って善政だったよな?今後のカレー侯爵領も期待できそうだし」
カレー侯爵「ところで、お二人の共同資産でよろしかったのですよね?」
リュカ「できれば分けていただければ……」
レアナ「山分けでいいじゃない、っていうか聖人聖女予算ですって!まるで家族みたい!」
リュカとレアナで分かれる意見。
カレー侯爵「おや、お二人は夫婦ではなかったのですか?」
リュカ「僕は十三歳ですからね、結婚はしていません」
レアナ「私はこないだ十四歳になったばかりよ」
カレー侯爵「これは失礼しました。としますと、婚約者ですね?それなら、特に問題はないでしょう?」
レアナ「婚約者ですって!」
レアナは頬を染めながら、なんか嬉しそうだ。
リュカ「僕達、そんなんじゃないですから!」
カレー侯爵「ジェントルマンは、レディに恥をかかせるものじゃありませんよ?」
カレー侯爵に、わりかしマジに言われて、リュカは凹みながら、ワサビ家の馬車に乗り込むのだった。




