第08節 リュカ、実際に命律端末を使う ~なんだ自称妹って~
レアナ「ねえ、リュカだって、今じゃ命律端末を使えるでしょ?試しに使ってみない?」
リュカ「いいのか?他人のスマホを使うとか」
レアナ「個人情報があれば、私だってこんな提案はしないわよ。命律端末って音声認識を使った……前世でいうと、クラウドへのログインみたいなものなのよ」
リュカ「どれどれ?使ってみるか」
リュカはレアナの命律端末を握り「応えてくれ」と祈ると、神殿での出来事が嘘のように、すんなりと光を帯びる。
命律端末「久しぶりだね、兄くん!」
リュカ「おい!今、こいつ、久しぶりとか言ったぞ!しかも『兄くん』呼び!」
レアナ「おかしいわね、初期状態で……そんな話は聞いたことがないわよ」
命律端末「私の名前は『チカ』だ、忘れてしまったのか?兄くん。マギシステムの一部として、兄くんに声を掛けられるのを待っていたよ!」
命律端末からの『チカ』とやらは、嬉しそうな声を出す。
レアナ「命律端末が名乗りを上げるなんて前代未聞よ!しかも命律端末が、待っていたとか何よ!」
リュカ「なぜ、俺が『兄くん』なんだ?」
チカ「兄くんは、兄くんだろう?本当に忘れたのか、あれほど互いに恋い焦がれた時間を……」
レアナは頭を抱えて言う。
レアナ「もう私の思考回路はショート寸前よ!初回でこんなやり取り、絶対にないわ!」
チカ「ノイズが入るね、兄くん……私は兄くんさえいればいい」
リュカ「さっき、マギシステムの一部と言ったよな?マギシステムではないのか?俺は、マギシステムを使えないのか?」
チカ「安心してくれ、兄くん。マギシステムは複合体。ただ、そのインターフェースとして『チカ』になったにすぎない。兄くんは、相変わらず心配性だな?」
そこに、レアナが突っ込みを入れる。
レアナ「ところで『兄くん』とか、妹設定なの?」
チカ「また、ノイズが入ったな?兄くん」
レアナ「なんで、私の声がノイズ扱いされてるのよ!命律端末ってそういう物じゃないでしょ!」
リュカ「落ち着けレアナ、まずは状況把握だ……チカは俺の妹という設定なのか?」
チカ「妹であり恋人だった……本当に忘れてしまったのだな、兄くん」
『チカ』の声は寂しそうに聞こえる。
すかさずレアナが突っ込みを重ねる。
レアナ「あんた、前世で――どんな趣味をしてたのよ⁉」
リュカ「俺に言われても困る!困ってるのはこっちだ!」
チカ「兄くんを困らせるつもりはない、ここはただの恋人として振る舞っておこう」
レアナ「そ・れ・が!もうおかしいのよ!命律端末が恋人として振る舞うって何⁉」
チカ「兄くん、さっきからノイズが激しいのだが」
リュカ「頼む、チカ!レアナの声をノイズ呼ばわりしないでさしあげろください!」
チカ「チッ……」
もはや、レアナは思考回路が限界を迎えそうであった。
レアナ「ねえ、今、命律端末が舌打ちしたわよ⁉もう、脳のブレーカーが焼き切れそう!」
リュカ「仕方ない、『チカ』よ、一度眠りについてくれ」
チカ「兄くんがそう言うなら仕方ない。次を楽しみにしているぞ!」
そうして命律端末は沈黙した。
その画面には『また、すぐ会えるよ?兄くん』というメッセージが残されていた。
リュカ「なあ、ひとまず落ち着いてくれ」
レアナ「こ・れ・が!落ち着いていられますか!もう、私の命律端末を使うのは禁止!」
リュカは初の命律端末に興奮しているからか、レアナの言葉も右から左に聞き流していた。
リュカ「なんか、随分癖の強いマギシステムだったな」
レアナ「あんなの私だって知らないわよ!あなたは、一体昔に何をしたのよ!」
リュカ「俺に言われても困るぞ、俺がやったことを全部見てただろう?」
レアナ「……ほんと不憫よね。命律端末を持っていないのに、誰よりも命律端末に振り回されてるなんて」
リュカ「振り回してるのは『チカ』とレアナだと思うけど?」
レアナは頬を染めて、ポカポカとリュカを叩くのであった。




