第70話「読まれる動きと逆転の糸口」
「くそっ! なんで、当たらねえんだ!」
俺は、レオの猛攻を必死で凌ぎながら、悪態をついた。
俺が光の斬撃を放とうとすれば、それを予測して距離を取り、接近戦を挑めば、完璧なタイミングでカウンターを合わせてくる。まるで、俺の思考そのものを読まれているようだ。
グレイの方も、状況は同じだった。
「うおおっ!」
「……っ!」
グレイが渾身の力で大剣を振るうが、名もなき青年はそれを軽くいなし、逆にグレイの鎧の隙間を、的確に錆びた剣で突いてくる。
深い傷ではない。だが、じわじわと体力を奪われ、動きが鈍らされているのは明らかだった。
「グレイさん! ミナトさん! 聖なる癒しよ!」
リリアが、必死に回復魔法をかけ続けてくれるが、それもいつまで持つか……。
「どうしたのかしら? あなたたち、もう終わり?」
玉座から、監視者の少女の、心底つまらなそうな声が響く。
「せっかく、あなたたちのために、最高の遊び相手を用意してあげたのに。これじゃあ、ただの公開処刑じゃない。本当に、がっかりだわ」
その言葉が、俺の頭を冷静にさせた。
そうだ。こいつは、俺たちを嬲り殺しにしたいわけじゃない。俺たちが、苦しみ、足掻き、そして、絶望する様を観劇したいんだ。
なら、まだ、何か手があるはずだ。
「グレイ!」
俺は、レオの剣を弾き返しながら叫んだ。
「こいつら、俺たちの動きを読んでやがる!」
「ああ、わかってる! だから、どうしたってんだ!」
「逆だよ! 読まれてるなら、それを逆手に取るんだ!」
俺の言葉に、グレイは一瞬、動きを止めた。
「……どういうことだ」
「俺が、レオを引きつける! その隙に、グレイは、あんたの相手をリリアの近くまで誘導してくれ!」
「リリアの近くへ? 何をする気だ!」
「いいから、頼む! これは、賭けだ!」
俺の真剣な眼差しに、グレイは一瞬ためらったが、すぐに意を決したように頷いた。
「……チッ。わかったよ。だが、失敗したら、承知しねえぞ!」
「リリア!」
俺は、次にリリアに叫んだ。
「俺が合図したら、ありったけの魔力を込めて、地面に、光の魔法を叩きつけてくれ! 攻撃じゃなくていい! とにかく、眩しい光を!」
「え、ええ!? 地面に?」
「ああ! 頼んだぞ!」
リリアは、俺の意図がわからないまま、力強く答えてくれた。
「わかった!」
「さあ、第二ラウンドと行こうぜ!」
俺は、レオに向き直った。
「お前が、俺たちの全てを知ってるってんなら、こいつは、どうだ!」
俺は、『星詠み』を大きく振りかぶった。リーパーを倒した時と同じ、大技の構え。
当然、レオはそれを警戒し、距離を取って俺の動きを窺う。
その動きは、完全に俺の思った通りだった。
俺は、レオの意識が俺に集中した、その一瞬を見逃さなかった。
「今だ、リリア!」
俺の絶叫と、リリアの詠唱が、闘技場に響き渡った。
「聖なる光よ!」
彼女が杖を地面に突き立てると、闘技場の床そのものが、目も眩むほどの閃光を放った。




