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ダンジョンで出会いを求めるのは間違っている  作者: 七星鈴花


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第59話「試練の終わりと新たな問い」

 光の粒子となって消えていく『影のミナト』を、俺はただ黙って見つめていた。

 奴が完全に消え去ると、洞窟には再び、水を打ったような静寂が戻ってきた。


「はぁ……はぁ……終わった……のか……」


 俺はその場に膝をついた。全身の力が抜け、立っていることすらできない。


「ミナトさん!」

「ミナト!」


 リリアとグレイが、すぐに駆け寄ってきて、俺の身体を左右から支えてくれた。


「よくやったな、ミナト」


 グレイが、俺の肩を強く叩いた。その手は、いつになく優しかった。


「当たり前だろ……。あんたの言った通りに、しただけだ……」

「ああ。最高の、答えだったぜ」


『ええ、本当に。最高の答えでしたわ』


 不意に、「監視者」の少女の声が、俺たちの脳裏に響いた。その声は、芝居がかった丁寧な口調に戻っていた。


『これにて、三度目の試練は、あなたの合格です。おめでとうございます、「候補者」さん』


「ふざけるな……!」


 俺は、声の主を探すように、虚空を睨みつけた。


「お前のせいで、俺たちは、死ぬところだったんだぞ!」


『あら、でも、死ななかったじゃない』


 少女の声のトーンが、ふっと素に戻る。


『それどころか、あなたはまた一つ、強くなった。仲間との絆、なんていう、私には理解できない力を使ってね。見ていて、とても楽しかったわ』


 その声には、やはり、俺たちの死闘を娯楽として消費した残酷な響きがあった。


「お前の目的は、なんなんだ。俺たちに、何をさせたい?」


 グレイが、低い声で問う。


『目的? そんなもの、ありませんわ』


 少女は、再び丁寧な口調で答えた。


『強いて言うなら、観劇でしょうか。あなたという、予想外の役者が、これからどんな舞台で、どんな演技を見せてくれるのか。私は、ただそれを、特等席で見たいだけなのです』


「観劇、だと……?」

「俺たちの命を、おもちゃみたいに……!」


 俺の怒りなど、全く意に介さない様子で、少女は続けた。


『さて、今回の試練も無事終わりましたので、前回同様、ご褒美を差し上げましょう』


「ご褒美なんざ、いらねえよ!」


『そう言わずに。これは、あなたたちが前に進むための、重要な道標になるはずですわ』


 少女の声が、すっとリリアに向けられたのを感じた。


『あなたが探している、その誰かさん。彼も、あなたと同じように、私の試練を受けました。そして……彼は、最後の試練で、道を間違えた』


「え……?」


 リリアが、息を呑む。


『彼は、仲間を信じることができなかった。たった一人で、全てを背負い込もうとして、そして、壊れてしまったの』


 少女の声は、どこまでも無機質に、残酷な真実を告げる。


『でも、彼はまだ、アビスの最深部で生きています。ええ、生きている、と言えるでしょう。ただ、もう、あなたが知っている彼の姿ではないというだけ。会いたいでしょう? あなたが道を間違えさせた哀れな彼の成れの果てに』


「……っ!」


 リリアは、唇をきつく結び、何も言えなかった。その瞳は、絶望とそれでも消えない希望の間で、激しく揺れていた。


『さあ、道は示しました。この洞窟を抜ければ、あなたたちは、より深層へと続く道へと出ます。せいぜい、死なないように、頑張ることね』


 その言葉を最後に、少女の声は、ふっつりと途絶えた。

 後に残されたのは、重すぎる「ご褒美」と俺たちの胸に深く突き刺さった新たな問いだけだった。

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