表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで出会いを求めるのは間違っている  作者: 七星鈴花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/77

第38話「洞窟の外で交わした約束」

 リリアの泣き声が、洞窟の中に小さく響いている。

 俺は、どうすることもできずに、ただ彼女の背中を見つめていた。

 しばらくして、俺は意を決し、グレイが出ていった洞窟の外へと向かった。

 彼は、洞窟の入り口の岩に腰掛け、薄暗いダンジョンの天井をぼんやりと見上げていた。その背中は、ひどく孤独に見えた。


「……リリアのこと、慰めてやらねえのか」


 俺が声をかけると、グレイは視線を動かさずに答えた。


「俺に、そんな資格はねえよ」

「資格……?」

「ああ。あいつを、あんな風にした原因の一端は、俺にある」


 グレイの言葉は、重く、そして苦々しい響きを帯びていた。


「なあ、グレイ。俺には、やっぱり話してはくれないのか」


 俺は、彼の隣に腰を下ろした。


「あんたが何を隠してるのか、何に苦しんでるのか、俺にはさっぱりわからない。でも、見てるのは辛いんだ。あんたが一人で抱え込んでるのも、リリアが泣いてるのも」

「……」

「俺は、弱い。それは、わかってる。あんたに比べたら、赤ん坊みたいなもんだ。でも、それでも、何かできることがあるんじゃないか。話を聞くことくらいなら、できるだろ」


 俺の言葉に、グレイは長い沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。


「……昔、俺にも仲間がいた」


 それは、俺が初めて聞く、彼の過去の話だった。


「俺と同じくらいの歳で、馬鹿みてえに真っ直ぐで、そして、お前みてえに、どこか甘っちょろい夢を見てるような奴だった」


 グレイの脳裏に浮かんでいるのは、きっと、あの情報屋ラナが言っていた「前のパーティー」の仲間なのだろう。


「そいつが、死んだ。いや……俺が、殺したようなもんだ」

「殺した……?」

「俺の判断ミスで、パーティーは壊滅状態になった。そいつは、仲間を助けたい一心で、無謀な行動に出て……そして、アビスの闇に消えた。俺は、あいつを止めることができなかった。いや、あいつの甘さを、心のどこかで見下してたから、本気で止めようとしなかったのかもしれん」


 グレイは、拳を強く握りしめる。


「あの日記を書いた冒険者のリーダーも、きっと、そいつと同じだったんだろうよ。リリアの優しさに触れて、自分にも何かできると勘違いして、そして、破滅した」

「……」

「だから、俺は怖いんだ。リリアの優しさは、人を惹きつける。だが、同時に、人を狂わせる。俺は、もう二度と、目の前で仲間が死ぬのを見たくねえ。あいつを、これ以上苦しませたくねえんだよ」


 初めて聞く、グレイの弱音。彼の本心だった。


「……わかったよ」


 俺は、静かに言った。


「もう、無理に聞こうとはしない。あんたが、そこまで重いものを背負ってるってこと、少しだけ、わかったから」

「……ミナト」

「でも、一つだけ言わせてくれ。俺は、あんたが言ってた昔の仲間とも、日記のリーダーとも違う。俺は、もうただのガキじゃない。あんたたちの仲間だ」


 俺は立ち上がり、グレイに向き直った。


「だから、信じてくれ。俺は、あんたたちを裏切ったりしない。絶対に、死んだりもしない。そして、いつか必ず、あんたが背負ってる荷物を、半分、俺に背負わせてみせる」


 俺は、そう誓うように言った。

 グレイは、驚いたように俺の顔を見つめ、そして、ふっと息を漏らすように笑った。


「……フン。でけえ口を叩きやがる」


 それは、俺が初めて見る、彼の本当の笑顔だったのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ