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ダンジョンで出会いを求めるのは間違っている  作者: 七星鈴花


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第30話「情報屋の囁きと新たな影」

 約束の三日後、俺たちは再びあの寂れた酒場を訪れた。

 昼間だというのに、相変わらず店内は薄暗く、カウンターの奥で女情報屋のラナが気怠そうに一人、グラスを磨いている。


「あら、来たわね。律儀に三日ぶりじゃない」


 俺たちに気づいたラナが、妖艶な笑みを浮かべた。


「約束だからな。で、何か分かったか?」


 グレイが、単刀直入に尋ねる。


「そう急がないでよ。まずは、座ったらどう? 何か飲む?」

「用件を先に聞かせろ」

「つれない男ねぇ……。まあ、いいわ」


 ラナは肩をすくめると、カウンターの下から二枚の羊皮紙を取り出した。


「まずは、ミナトの話からよ」


 ラナは、一枚の羊皮紙を広げながら言った。


「あんたが路地裏でチンピラを返り討ちにした話、もう街じゃちょっとした噂になってるわ。『E級の新人冒険者が、伝説級の剣を手に、ゴロツキを一蹴した』ってね。尾ひれがついて、あんたは天才剣士だってことになってる」

「なっ……! 俺はそんな……!」

「噂なんてそんなものよ。でも、おかげで面倒なことにもなってる」


 ラナは、楽しそうに続けた。


「あんたのその剣、『星詠み』を狙って、街のゴロツキだけじゃなく、いくつかの悪徳商会や、名前の知られた盗賊団まで色めき立ってる。あんたの首には、今や見えない懸賞金がかかってるようなものよ」

「……だろうな」


 グレイは、顔色一つ変えずに言った。


「それで、もう一つの話」


 ラナは、二枚目の羊皮紙に視線を落とした。その表情から、笑みが消える。


「こっちが、本題。……そして、厄介な話よ」 「リリアのことか」

「ええ。『銀髪で、翠色の瞳の女を探している人間』ね。古い情報を洗ってみたけど、そんな話は一つも出てこなかったわ」

「そう、か……」


 隣で、リリアががっくりと肩を落とすのがわかった。


「でもね」


 ラナは、声を潜めて言った。


「一つだけ、奇妙な情報があった。ここ数年、『ダンジョンの深層で、銀髪翠眼の少女に助けられた』って証言が、ごく稀にギルドに報告されてるのよ」

「なんだって!?」


 俺は、思わず声を上げた。それは、俺とリリアの出会いの状況と全く同じだ。


「でも、その冒険者たちは、皆一様に、その後の記憶が曖昧なの。『気がついたら街に戻っていた』とか、『助けられたのは夢だったのかもしれない』とかね。ギルドも、ただの噂話としてまともに取り合ってない」

「……」


 グレイは、何かを考えるように、黙ってラナの話を聞いている。


「そして、もう一つ。その噂が流れ始めた時期とあんたの仲間――グレイ――が前のパーティーを解散した時期が、奇妙なほど一致するのよね」


 ラナの鋭い視線が、グレイを射抜く。


「……偶然だろ」


 グレイは、短く、そして低く答えた。


「そうかしら? 私には、そうは思えないけどね」


 ラナは、意味ありげに微笑んだ。


「今回の情報はここまでよ。あんたたちの周りには、あんたたちが思ってる以上に、面倒な影がうろついてる。せいぜい、背後には気をつけなさい」


 ラナの言葉は、ただの情報屋の忠告とは思えなかった。それは、この街の闇を知り尽くした者からの確かな警告だった。

 明日から投稿頻度が1日3話に変わります。毎日7時30分頃、12時30分頃、21時30分頃に更新する予定です。

 これからもよろしくお願いします。

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