第23話「冒険者ランクと不釣り合いな価値」
「へえ……『星詠み』ね。大層な名前じゃないか」
ギルドマスターは、鑑定用の魔法具を片手に、『星詠み』を食い入るように見つめている。彼女の片眼鏡の奥の瞳が、興奮にきらめいていた。
「こんな逸品が、まだダンジョンに眠っていたとはね。あんたたち、一体何と戦ったんだい?」
「それは、こっちの報告書に書いてある」
グレイは、別の羊皮紙をカウンターに滑らせた。アルラウネとの戦闘の顛末をまとめたものだろう。
ギルドマスターが報告書に目を通している間、ギルド内の視線は未だに俺と『星詠み』に突き刺さったままだ。
「おい、見たかよあの剣……」
「ああ。あのガキ、何者なんだ……?」
「グレイが連れてるってことは、ただの素人じゃねえんだろうが……」
ひそひそと交わされる会話が、嫌でも耳に入ってくる。居心地が悪い。
「……なるほどね。アルラウネの変異種、それに正体不明の騎士ときたか。どうりで、あんたもそのザマになるわけだ」
ギルドマスターは報告書から顔を上げ、納得したように頷いた。
「で、報酬はどうなる」
「変異種の討伐は、B級相当のクエストとして処理しとくよ。素材はなしか。まあ、それでも金貨五十枚。あんたたちの治療費と、そのガキの装備代くらいにはなるだろ」
金貨五十枚。それがどれほどの価値なのか、俺にはまだピンとこない。
「それから、ミナトだったね」
ギルドマスターは、俺に向き直った。
「あんたの冒険者ランクだけどね。普通、新人は一番下のF級からスタートするもんだけど……」
彼女は、ちらりとグレイとリリアを見る。
「A級冒険者のグレイと、同じくA級のリリアのパーティーに入るってんなら、特例で一つ上のE級から始めさせてやるよ。感謝しな」
「A級……?」
俺が聞き返すと、リリアが隣で小さく教えてくれた。
「冒険者ランクは、下からF、E、D、C、B、A、そして最高のS級っていう順番なの。私とグレイさんは、上から二番目のA級なんだよ」
「へえ……」
つまり、二人はこのギルドでもトップクラスの実力者だということだ。そんな人たちと、俺は今までパーティーを組んでいたのか。
「はいよ、これがE級の冒険者証さ」
ギルドマスターから、銅色の金属プレートを手渡される。そこには、俺の名前が刻まれていた。
これが、俺がこの世界の一員になった証。
「ありがたく受け取りな。もっとも、その剣を持っている以上、あんたのランクなんて、もはや飾りみたいなもんだけどね」
彼女は、意味深に笑う。
「どういう意味だよ?」
「その剣一本で、そこそこの貴族が城ごと買えるってことさ。E級のひよっこが持つには、あまりに不釣り合いな代物だって言ってるんだよ」
ギルドマスターの言葉は、じわりと俺の心に重くのしかかった。
「気をつけな、坊主。その剣は、富や名声だけじゃなく、数え切れないほどの嫉妬と災いを、あんたに運んでくるだろうからね」
彼女は、まるで未来を予言するように、そう告げた。
俺は、手の中にある銅のプレートとカウンターに置かれた『星詠み』を、ただ交互に見つめることしかできなかった。




