表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで出会いを求めるのは間違っている  作者: 七星鈴花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/77

第21話「初めて見る異世界の空と迷宮都市」

「……よし、こんなもんか」


 グレイは、上半身に包帯を巻かれた痛々しい姿ながらも、ゆっくりと立ち上がった。

 リリアの懸命な治療のおかげで、命に別状はないようだ。


「グレイさん、もう動いて平気なの?」

「ああ。骨には異常はねえ。これくらいなら、歩くのに支障はねえよ」


 グレイはそう言うと、俺に向き直った。


「……ガキ。お前の願い、聞いてやる」

「え……?」

「強くなりたいんだろ。この剣の使い方を知りたいんだろ。だったら、まずはそのナマクラみてえな身体を叩き直す。ついてこい」

「どこへ行くんだ?」

「街だ。迷宮都市アークライト。こんな場所でこれ以上、お前に剣のイロハを教えてる時間はねえ。それに、お前たちの装備も、そろそろ新しいものに買い替える必要がある」


 街。アークライト。

 その言葉に、俺の心は微かに高鳴った。

 異世界に来てから、俺はずっとこの薄暗いダンジョンの中にいた。外の世界がどうなっているのか、全く知らない。


「……わかった。行くよ」


 俺たちは、星空の広間を後にした。

 不思議なことに、あれだけ重かった黒曜石の扉は、俺が『星詠み』を手にしてからは、まるで意思があるかのように、俺たちが近づくとひとりでに開閉するようになった。


「便利なこったな」


 グレイは面白くなさそうに言うが、そのおかげで俺たちはスムーズに先へ進めた。


 帰り道は、奇妙なほど静かだった。

 あれだけいたモンスターの姿は一匹も見当たらない。


「やっぱり、静かだな」

「ああ。あの『監視者』の領域を抜けたことで、雑魚どもは元の巣に戻ったか、あるいは……」


 グレイは何かを言いかけたが、それ以上は口にしなかった。


 数時間後。


「……光だ」


 リリアが、前方を指さして言った。

 通路のずっと先に、今まで見てきたランプの灯りとは違う、白く、力強い光が見える。


「あれが、出口だ」

 

 グレイが言う。

 俺たちは、光に向かって足早に進んだ。

 光はどんどん大きくなり、やがて俺たちは、洞窟のような場所から外へと飛び出した。


「うわ……」


 思わず、声が漏れた。

 目に飛び込んできたのは、どこまでも広がる真っ青な空だった。

 現実世界で見ていたくすんだ灰色がかった空じゃない。

 インクをぶちまけたような吸い込まれそうなほどの深い青。

 そして、太陽の光が、肌をジリジリと焦がすように熱い。


「これが……この世界の、空……」


 俺が空に見とれていると、グレイが俺の頭を小突いた。


「いつまで空なんざ見てやがる。あれを見ろ」


 グレイが指さした先。そこには、信じられない光景が広がっていた。


 巨大な縦穴――巨大なダンジョン『アビス』――の縁に沿うようにして、無数の建物が、まるで崖に張り付くようにして立ち並んでいる。石造りの家、木造の塔、レンガの壁。

 道行く人々は、俺と同じ人間もいれば、屈強なドワーフ、耳の長いエルフなど様々だ。

 活気のある声、鍛冶の音、酒場の喧騒、それら全てが混じり合って、街全体が生きているかのように脈打っている。

 これが、迷宮都市アークライト。


「すげえ……」


 俺は、ただ呆然と、その光景を眺めていた。

 ラノベで読んだ、剣と魔法の世界。それは、確かにここに存在していた。


「感動してる暇はねえぞ、ガキ」


 グレイが、俺の肩を叩いた。


「説教は後だ。まずは、ギルドに行って、今回の報告とお前の正式な登録を済ませる」

「ギルド……」

「ああ。お前が本当の意味で、この世界の冒険者になるための最初の場所だ」


 グレイはそう言うと、俺たちを促し、活気あふれる街の中へと歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ