第18話「白銀の騎士と呼ばれた者」
キィン! ガギンッ!
星空の広間に、激しい金属音が鳴り響く。
「くそっ、速いだけじゃねえ、一撃が重すぎる!」
グレイは、白銀の騎士が振るう『星詠み』を大剣で受け止めながら、苦々しげに呻いた。
騎士の剣筋は一切の無駄がなく、まるで流れる水のように滑らかで、それでいて岩を砕くかのような鋭さと重さを兼ね備えている。
「グレイさん! 聖なる光よ、彼の者に力を!」
リリアが後方から強化魔法を詠唱し、グレイの身体が淡い光に包まれる。
「おう!」
力を増したグレイが、雄叫びと共に大剣を薙ぎ払う。 だが、騎士はそれを最小限の動きでひらりとかわし、即座に反撃の斬撃を繰り出した。
攻防は完全に拮抗している。いや、手数と正確さで、騎士がわずかに上回っていた。
「くそっ……! 見てるだけなんて、できるかよ!」
俺は錆びた剣を握りしめ、二人の戦いに割り込んだ。グレイの死角になる側面から、騎士の胴体めがけて斬りかかる。
「甘い」
金属的な声と共に、騎士はグレイの攻撃をいなしながら、俺の剣をこともなげに弾き返した。
腕に走る強烈な痺れ。俺の一撃など、全く相手にされていない。
だが、俺が剣を交えたその瞬間、騎士の動きが初めて、ぴたりと止まった。
兜の奥の視線が、初めて明確な意志を持って、俺だけを捉える。
「……お前か」
騎士が、静かに言った。
「お前が、呼ばれた者か」
「な、何のことだ!?」
「その魂に刻まれた、異界の匂い。我らが主がお前を招いた理由、ここで見せてもらおう」
やはり、こいつは俺をここに呼んだ「監視者」の手先だったのだ。そして、俺がこの祭壇に引き寄せられたのも、俺が「転移者」だから。この試練は、最初から俺のために用意されていたのだ。
「……そういうことかよ。こいつの的は、最初からこのガキだったってわけか!」
グレイが、状況を察して吐き捨てる。
「だったら話は早え! ミナト、こいつの注意を引け! 俺が叩き斬る!」
「言われなくても!」
俺は再び騎士に向かって突進した。
今度は、ただがむしゃらに斬りかかるのではない。グレイの教えを思い出す。
敵の目を見ろ。動きを読め。
「うおおおっ!」
俺は騎士の足元を狙って、低い姿勢で剣を振るう。
騎士はそれを容易く防ぐが、その一瞬、注意が俺に向いた。
「今だ!」
その隙を、グレイが見逃すはずがない。
「はあああっ!」
背後から、渾身の力が込められた大剣が、騎士の頭上めがけて振り下ろされる。
「聖なる守護よ!」
リリアが、俺とグレイの前に光の壁を展開し、騎士の反撃に備える。
三人の攻撃が、初めて一つの線となって騎士に迫る。
しかし、騎士は冷静だった。
「遅い」
騎士は、グレイの大剣を『星詠み』の腹で受け流すと同時に、その勢いを利用して回転し、俺が作った光の壁を蹴りつけて距離を取った。
一連の動きに、全く淀みがない。
「その程度か」
騎士は、剣の切っ先を俺たちに向けたまま、静かに言った。
「運命を切り拓く覚悟とは、その程度か」
その言葉と共に、騎士が持つ『星詠み』の刀身が、まるで夜空の星々を吸い込むように、深い青色の光を放ち始めた。
空気が、震える。
これまでの比ではない、圧倒的なプレッシャーが、俺たち三人にのしかかってきた。




