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ダンジョンで出会いを求めるのは間違っている  作者: 七星鈴花


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第17話「星空の祭壇と最初の試練」

「おい、ミナト! 待て、一人で先行するな!」


 グレイの制止の声が、背後から飛んでくる。

 だが、俺の足は止まらなかった。 あの祭壇が、俺を呼んでいる。そんな、根拠のない確信があった。


「ミナトさん!」


 リリアも、慌てて俺の後を追ってくる。


 星空に浮かぶ祭壇までは、思ったよりも距離があった。見えない床の上を歩く奇妙な感覚にも、少しずつ慣れてくる。

 やがて祭壇に辿り着くと、俺はその上に置かれていたものを見て、息を呑んだ。


「剣……?」


 祭壇の中央に突き立てられていたのは、一振りの剣だった。俺が今まで使っていた錆びた剣とは比べ物にならない美しい装飾が施された片手剣。

 鞘に収められているが、その柄頭には、夜空を閉じ込めたような深い青色の宝石が埋め込まれている。


「なんて、綺麗な剣……」


 追いついてきたリリアが、感嘆の声を漏らす。


「罠だ。触るなよ」


 グレイは、警戒を解かずに剣を睨みつけている。


「また罠かよ。でも、こいつからは、アルラウネの時みたいな嫌な感じはしないぞ」

「だからと言って、安全とは限らん」


 俺は、まるで何かに憑かれたように、その剣に手を伸ばした。


「おい、やめろと言ってるだろ!」


 グレイが俺の腕を掴もうとするが、それより早く、俺の指が剣の柄に触れた。

 その瞬間。 祭壇の上の剣が、まばゆい光を放った。


「うわっ!」


 あまりの眩しさに、俺たちは思わず腕で顔を覆う。

 光が収まった時、俺たちの目の前に、一人の騎士が立っていた。

 全身を白銀の鎧で覆い、顔は兜の面頬で窺えない。その手には、祭壇にあったものと全く同じ、青い宝石の埋め込まれた剣が握られていた。


「……何者だ、お前は」


 グレイが、大剣を構えながら低い声で問う。

 騎士は、何も答えない。ただ、その兜の奥から、冷たい視線が俺たちを射抜いているのを感じる。


「……試練を、始めよう」


 騎士の口から発せられたのは、男とも女ともつかない、金属的で無機質な声だった。


「試練だと? ふざけるな!」

「我を打ち破り、その資格を示せ。さすれば、道は開かれん」


 騎士はそう言うと、ゆっくりと剣を構えた。

 その構えには、一切の隙がない。


「資格ってのは、その剣を使う資格ってことか?」


 俺が尋ねると、騎士は静かに頷いた。


「この剣、正式名称を『スターゲイザー』、またの名を『星詠み』。運命を選び、切り拓く者のためのもの。お前たちに、その覚悟があるか、今ここで問う」

「……話は通じそうにねえな」


 グレイは、大剣を握り直す。


「リリア、ミナト! 下がってろ! こいつは、俺がやる!」

「グレイさん!」

「ダメだ、グレイ! 俺も戦う!」


 俺も錆びた剣を構えた。

 これは、俺を呼んだ『監視者』からの、最初の問いかけなのだ。逃げるわけにはいかない。


「足手まといが……いや、好きにしろ。だが、死ぬなよ」


 グレイは一瞬言い淀み、そう吐き捨てた。


「来るぞ!」


 グレイの叫びと同時に、白銀の騎士が動いた。

 その動きは、まるで星の光が流れるように、速く、そして正確無比だった。


 キィン!という甲高い金属音。


 グレイの大剣と、騎士の『星詠み』が、激しく火花を散らして激突した。

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