表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで出会いを求めるのは間違っている  作者: 七星鈴花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/77

第16話「黒曜石の扉と歪んだ星空」

 黒曜石の扉は、まるで生きているかのように、冷たいプレッシャーを放ち続けていた。


「なんだよ、この圧……。扉の向こうに、とんでもない奴がいるってことか……」


 俺は、ゴクリと喉を鳴らした。ただ扉の前に立っているだけで、全身の毛が逆立つようだ。


「ああ。だが、ここで引き返す選択肢はねえ」


 グレイは大剣の柄を握りしめ、覚悟を決めたように言った。


「行くぞ」

「待って、グレイさん……!」


 リリアが、グレイの腕を掴んだ。その顔は青ざめ、瞳は不安に揺れている。


「なんだか、すごく嫌な感じがする……。でも……」


 彼女は、扉をじっと見つめ、何かを探すように呟いた。


「もしかしたら、この先に……私の探し物も……あるのかもしれないから」

 

 以前、彼女が口にしていた大切な探し物。その手がかりが、この先にあると彼女は感じているのだろうか。


「感傷に浸るのは後にしろ」


 グレイは、リリアの手を振り払うことなく、静かに言った。


「今は生き残ることだけを考えろ。奴の領域だ、何が起きてもおかしくねえ」

「……わかってる」

「大丈夫だ、リリア」


 俺は、震える彼女の肩にそっと手を置いた。


「俺たちがついてる。あんたの探し物も、俺を呼んだ声の主も、全部まとめて見つけ出してやるよ」

「ミナトさん……」

「フン。威勢だけはいいな」


 グレイは鼻で笑ったが、その声にはいつものような刺々しさはない。


「だが、死ぬなよ、二人とも」


 そう言うと、グレイは扉に両手をかけ、全体重を乗せて押し始めた。


 ゴゴゴゴゴ……と、地響きのような低い音を立てて、黒曜石の扉がゆっくりと開いていく。

 隙間から漏れ出すのは、光ではなかった。吸い込まれそうなほどの深い闇。

 そして、扉が完全に開かれた時、俺たちは言葉を失った。


「うわ……なんだ、ここ……」


 そこに広がっていたのは、通路でも、部屋でもなかった。

 床も、壁も、天井もない。無限に広がる、宇宙空間そのものだった。

 足元には、見えない床がある。だが、一歩踏み出すれば奈落に落ちてしまいそうな錯覚に陥る。

 頭上には、遠い銀河や星雲が渦を巻き、手の届きそうな距離を、いくつもの星がゆっくりと流れていく。


「空が……部屋の中に……?」


 リリアが、呆然と呟く。


「幻覚か……? いや、違う」


 グレイは、足元の見えない床を剣の先で突き、確かな手応えがあったことを確認する。


「空間そのものが、捻じ曲げられてやがる。とんでもない魔力だ」


 静かだった。モンスターの気配も、風の音すらもない。ただ、星々の放つ無音の光だけが、この異常な空間を満たしている。


 俺たちは、互いを見失わないように身を寄せ合いながら、ゆっくりと先へ進んだ。

 道と呼べるものはない。ただ、星空の中を、まっすぐに歩いていく。

 しばらく進むと、その空間の中心に、ぽつんと浮かぶ一つの祭壇のようなものが見えてきた。

 黒い大理石でできた簡素な祭壇。その上には、何かが置かれている。


「あれは……」


 俺がそれに目を向けた瞬間、心臓が微かに引き寄せられるような奇妙な感覚に襲われた。


「おい、どうした?」


 俺の異変に気づいたグレイが、鋭く問いかける。


「いや……なんでもない。ただ、あの祭壇……何か、気になる」


 俺は、その引力に導かれるように、一歩、また一歩と、星空に浮かぶ祭壇へと足を進めていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ