表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンで出会いを求めるのは間違っている  作者: 七星鈴花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/77

第15話「変わりゆくダンジョンと奇妙な静寂」

 十分な休息を取り、俺の身体の痛みもだいぶ和らいだ頃、俺たちは再びダンジョンの奥へと足を踏み入れた。


「いいか、昨日までとは状況が違う。常に周囲を警戒しろ。どんな些細な変化も見逃すな」


 グレイの低い声が、静かな通路に響く。


「わかってる」

「うん、気をつけるね」


 俺とリリアは、緊張した面持ちで頷いた。


 アルラウネがいた広間を抜け、さらに先へ進む。


「……なあ、何かおかしくないか?」


 しばらく歩いたところで、俺は違和感を口にした。


「ああ。静かすぎる」


 グレイも、同じことを感じていたようだ。


 あれだけ頻繁に遭遇していたゴブリンやコボルトの姿が、一体も見当たらない。

 まるで、ダンジョンからモンスターがすべて消え去ってしまったかのように、不気味なほど静まり返っている。


「モンスターたちが、どこかに行っちゃったのかな?」


 リリアが、不安げに呟く。


「いや、逆だ」


 グレイは、壁を指さした。

 そこには、真新しい、巨大な爪痕が幾筋も刻まれていた。


「何だこれ……。熊でもいるのか?」

「もっとデカい何かだ。ここのモンスターは、逃げ出したか、あるいは……食われたか、だな」


 グレイの言葉に、ごくりと喉が鳴る。この先に、そんな化け物がいるというのか。


「おい、ミナト。お前、何か感じるか?」


 不意に、グレイが俺に尋ねた。


「え? 俺に?」

「お前を呼んだ『監視者』とやらは、この先にいる可能性が高い。何か、引き寄せられるような感覚はねえのか?」


 言われて、俺は意識を集中させてみる。

 風、匂い、音……。五感を研ぎ澄ますが、特に何も感じない。


「いや……何も。ただ、気味が悪いくらい静かだってことくらいだ」

「そうか……」


 グレイは、何か納得いかないような顔で、再び前を見据えた。


 さらに進むと、通路の様子が明らかに変わってきた。これまでは、無機質な石造りの壁が続くだけだった。

 だが、今は壁の所々に、水晶のようなものが突き出し、淡い光を放っている。


「うわ……きれい……」


 リリアが、思わず感嘆の声を漏らす。


 まるで、星空の中にいるようだ。幻想的な光景に、俺も一瞬だけ見とれてしまう。


「浮かれるな。これも、ダンジョンの変化の一部だ」


 グレイが、冷たく釘を刺す。


「この光、魔力を帯びてる。おそらく『監視者』の力が、ここまで影響を及ぼし始めてるんだ」


 壁の水晶は、奥へ進むにつれてその数を増やし、輝きを増していく。

 やがて俺たちの前に、巨大な扉が現れた。

 これまで見てきたような石造りの通路とは不釣り合いな、黒曜石で作られたかのような、荘厳な両開きの扉。表面には、見たこともない複雑な紋様がびっしりと刻まれている。


「なんだ、これ……」

「……ここが、入り口ってことか」


 グレイは、扉を見上げながら呟いた。


「入り口? 何の?」

「決まってるだろ」


 グレイは、大剣の柄に手をかけた。


「俺たちを試している、クソったれな『監視者』の領域への、な」


 扉からは、何の音も聞こえない。

 ただ、その向こう側から、計り知れないほどの強大なプレッシャーが、ひしひしと伝わってくるだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ