第11話「擬態と三人の連携」
「ミナト、リリア! 下がってろ!」
グレイの怒号が飛ぶ。彼は大剣を構え、襲い来る無数の蔓を薙ぎ払った。
だが、蔓は切られても切られても、まるで尽きることがないかのように次々と再生し、グレイに襲いかかる。
「くそっ、キリがねえ!」
「グレイさん!」
リリアが悲鳴に近い声を上げた。
「リリア! グレイに援護を!」
俺は叫んだ。
「え、でも……!」
「いいから早く! 俺が隙を作る!」
俺は懐から、先ほど手に入れたハイポーションを取り出した。
「ミナトさん、それ……!」
「借りるぞ!」
俺は小瓶のコルクを歯で引き抜き、中身を自分の左腕にぶちまけた。赤い液体が、じわりと腕に染み込んでいく。
「おい、ガキ! 何をやってる!」
蔓を捌きながら、グレイが叫ぶ。
「見てろよ!」
俺は剣を握りしめ、アルラウネ本体――人型の擬態――に向かって、まっすぐに突っ込んだ。
「ミナトさん、ダメ!」
リリアの制止も聞かず、俺はただ前だけを見て走る。
当然、アルラウネは俺を獲物と認識し、その蔓の何本かを俺に向けてきた。
「うおおおっ!」
俺は避けなかった。いや、避けられなかった。数本の蔓が、鞭のように俺の身体を打ち、腕や足を切り裂く。激痛が走る。
だが、ポーションの効果か、傷はすぐに熱を帯び、驚異的な速さで再生を始めた。
「こいつ……! しぶとい!」
アルラウネが苛立ったように、さらに多くの蔓を俺に集中させる。
「今だ、グレイ!」
俺は叫んだ。俺が囮になることで、グレイを縛り付けていた蔓の数が、明らかに減っていた。
「……チッ、無茶苦茶しやがる!」
グレイは悪態をつきながらも、その好機を逃さなかった。身軽になった彼は、残りの蔓を力任せに引きちぎり、アルラウネ本体へと肉薄する。
「聖なる光よ、彼の者に力を!」
リリアの詠唱が響き、グレイの身体が淡い光に包まれた。強化魔法だ。
「はあああっ!」
グレイの雄叫びと共に、大剣が閃光を放つ。
アルラウネの擬態は、その一撃で胴体から真っ二つにされ、悲鳴を上げる間もなく霧散した。
だが、戦いは終わらない。 擬態が消えた場所から、巨大な花の蕾のようなものが姿を現した。
あれが、本体か。
「ミナト! そいつから離れろ!」
グレイが叫ぶ。
蕾は、不気味な脈動を繰り返した後、その花弁をゆっくりと開き始めた。
「まずい! 花粉を吸うな!」
「くそっ!」
俺は咄嗟に口と鼻を腕で覆う。甘ったるい匂いが、さらに濃くなった。頭がクラクラする。
「リリア! 風の魔法は使えるか!」
「やってみる!」
リリアが杖を構える。
「吹き荒れる息吹よ、かの不浄を薙ぎ払え!」
リリアを中心に、突風が巻き起こった。甘い香りの花粉が、風に煽られて逆方向へと流されていく。
「ナイスだ、リリア!」
グレイが叫び、開花したアルラウネの本体へと、再び斬りかかった。




