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最終決戦編 -10

 ラズリは、困惑の表情で頭を掻き(むし)る。


「まさか…天使の声を?再生の能力?それじゃあ、私はクリム・ヴァイスに勝てない?でも、ここで負けたら、また私は無力なままだ…」


 それを心配そうに見つめるヴァイスは、ゆっくりとラズリに近づく。

 その歩幅に合わせるように、ラズリはゆっくりと後ろに下がっていく。


「嫌だ。嫌だ。嫌だ…。もう悔しいのは嫌なの。何もできないのは嫌なの。この世界にとっての当たり前は、私にとっての理不尽だった。あなたも当たり前を守るために、平和のために、私の痛みを理不尽に切り捨てるんでしょ?」


「そんなことはしないよ」


「…そんなの分からない。もう分かりたくもない。私の魔法だけが自分の弱さを…無属性でも強くなれると信じて走り続けた過去を肯定してくれる」

──真零(しんゼロ)魔法、グラビティ·アンチベーゼ。


 ラズリが全身に纏う魔力は、触れた空間の重力を拒絶し、無重力に変える。そして、ラズリはふわふわと軽くなった足で地面を蹴り、空高く飛び立つ。

 それを見上げるヴァイスは、地面を見下げてしゃがみ込み、手のひらを大地に添える。


真聖陽(しんせいよう)魔法、ベルデ·レーヴェン」


 乾いた砂地から芽生える新緑が、太く頑丈に()じり伸びながら、蛇のように地を()い、ヴァイスの目の前でグルグルと渦巻いていく。

 その作り出された足場にヴァイスは乗り込み、その木肌に触れると、地面に向かって幾つもの太い木の根が生え伸びていく。そして、それはラズリを追いかけるように、足場をグンと空へ押し上げる。

 ラズリは両腕を天に大きく伸ばし広げ、昇り龍のように迫るヴァイスを澄んだ無表情で見下ろす。


「勇者を許していいはずがない。痛みが消えるわけもない。そういう過去の(しかばね)を、黙って踏み越える強さが私にはないんだ…。だから、みんな平等が当たり前の、魔法のない世界を私が作る」


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