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最終決戦編 -8

「私の視界を遮り、距離を取る。おまけにおじいちゃんまで助けて…まるで英雄(ヒーロー)ね。真零魔法、ニヒル·アンチベーゼ。」


 深海から湧き上がる気泡のように透明で真っ暗な形のない虚空が、ラズリの手のひらから放たれ、ヴァイスに向かって突き進む。


「また君はそういうことを…。悪役(ヴィラン)になったつもりか?神聖炎魔法、アロンダイト。」



 (ほとばし)る火花が煌めく一瞬に白炎の剣を形成したヴァイスは、迫り来る虚空に向かって刃を振り上げる。

 それは、まるでシャボン玉を突付くような手応えの無さだった。しかし、ヴァイスはそれよりも、虚空を上空へ弾いた白炎の刃が跡形もなく消え去っていたことに驚いていた。


「なるほど…。遠距離と連撃で攻めるしかないか。神聖炎魔法、アグニ·ジュデ·リュシオル。」


 数多の白炎の粒が星空を宙に描くように現れ、ラズリに向かって飛んでいく。

 しかし、ラズリはそれに構いもせず、ヴァイスに向かって真っ直ぐに駆け出す。


真零魔(テロス·ミデン)法纏い(アンチベーゼ)


 ラズリは全身に虚空を纏わせ、目の前を覆い尽くす白炎と、そこから湧き上がる灼熱の中を突き進む。すると、虚空に触れる白炎はうねりを上げて消えていく。

 そして、ラズリはヴァイスの目の前まで急接近し、勢いよく踏み込む。

 ヴァイスは、白炎を纏った掌を咄嗟に立て、突き出されたラズリの強く握られた拳を受ける。

 しかし、それはヴァイスの掌を貫通し、まるで砂浜に彫られた文字が波に掻き消されるかのように、呆気なく右腕の血肉を(えぐ)る。

 ヴァイスは弱い息を浅く吐きながら、血塗れの右肩を見つめる。


「また…何もできなかったよ、母さん…。シュヴァールさん、ごめんね。」

──力が入らない。血が止まらない。俺は…何のために強くなった?母さんの復讐のため?絶望を乗り越えるため?大切な人を守るため?平和のため?いや…思い起こせ。痛みを、幸せを。そう…隣り合うはずだった笑顔を叶えられるように。俺にはまだ…まだ助けたい人がいるんだ。


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