最終決戦編 -3
「行かなきゃ…。」
ラズリは強張りの抜けた無表情のまま、濤声に背を向けて歩き出す。
それから幾度の夜を越える旅路を通り、ラズリは陽翼の皇剣本庁舎の前に立ち尽くす。
「零魔法、ニヒル·エクリプス。」
ラズリの全身を纏う魔力から周囲に放たれるのは、虚無。
立ち塞がる団員たちがラズリを止めようと近づき、虚無に触れた瞬間、次々に意識を失っていき、バタバタと倒れていく。
その怪奇な光景を目の当たりにし、距離を取りながら怯み静まる団員たちを見向きもせずに、ラズリはゆっくりと足を踏み進める。
そのとき、眩い光柱が天から降り注ぎ、ラズリが不意に瞬きをすると、目の前には”勇者”レギルとシュヴァールの姿があった。
周囲を見渡し、唖然とするレギルを、ラズリは虚ろな眼差しで睨みつける。そして、周囲を漂う虚無は溢れ広がり、レギルとシュヴァールを包み込む。
すると、レギルはシュヴァールの肩に手を添え、光輝く魔力で二人を包み守る。
「神聖光魔法纏い。倒れている彼らを見るに、君の魔法は精神攻撃のようなものかな?実に優しい魔法じゃないか。さて、君の目を見れば明白だが、一応、聞いておこうか。この襲撃の目的は?」
何も起こらず、キョトンと立ち尽くしたままの二人を見て、歯を食いしばるラズリは、拳を強く握り締める。
「魔法のない世界のために、ここで勇者を断罪する。私は過去の傍観者では終われない。」
すると、シュヴァールは一歩前に足を踏み揃え、一息吸う。
「無色の魔力を纏う少女よ、君にとって武力の歴史は罪か…。なら、まずは語ろうか。私は陽翼の皇剣参謀総長、クリム・シュヴァール。きっと君からすれば、罪の根源と言えるだろう。」




