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最終決戦編 -1
春茜 陰果てむ海 彼方渚
陽出りて燃ゆ 白遊蝶花
素朴に混じる華美が耀う亜麻色の砂浜に、少女はザッザッと素早く連なる足音を深く踏み刻む。
「なんでだろ…。涙が止まらない。私が望んできた平和な世界が、叶ったはずなのに…。悔しくて、悔しくて…涙が止まらない。」
──あの頃と何も変わらない。やっぱり、私は無力なんだ…。
今から十二年前、新緑の青さ薫る皐月晴れに、五歳の彼女は砂浜に立ち、波に打たれる影法師を見つめていた。
「ラズリは女の子だから、強くならなくてもいいんだよってお母さんは言うの。でもね、お父さんと離れ離れになったのは、私が弱いからなの。無属性って言うんだって。」
ラズリは涙を堪えようと勢い強くしゃがみ込み、冷たい漣に手のひらを沈める。
「私は生まれてこなければ良かったのかな?」
──もう何も見たくない。何も聞きたくない。…魔法なんか嫌い。
ラズリは濡れ浸った砂についた彼女の手形が、波に掻き消されるのをぼんやりと眺めていた。
その日を境に、ラズリは自分の部屋に引きこもり、一歩も外に出なくなった。




