勇者決戦編 -7
そのとき、ソナの気配を感じ取ったシュヴァールは、ヴァイスの方を不意に見つめ、涙を流す。
「ソナ…。思った通り、君は来てくれたんだね」
──今でも鮮明に覚えている。彼女との出会いは三十六年前、秋入梅の朝だった。
その日、シュヴァールは白い魔力を宿す少女が、王宮の門扉をこっそりと開け、傘を差して駆けていくのを見かけた。それを急いで追いかけ、腕を掴んで引き止める。
「君、どこへ行くの?勝手に家を出たらダメじゃないか」
すると、彼女はピンクの長靴で地面を擦り蹴りながら振り返る。
「いいの。私、家出するから。っていうか、おじいちゃん、誰?」
「私はクリム・シュヴァール。王家に仕える老兵だ。君の名前は?」
「私は…ヘリオス・ソナ。家出するから、もうただのソナ」
シュヴァールは腕を離すと、ソナの前にしゃがみ込む。
「君を悩ませるのは、白い魔力かな?」
それを聞いたソナは、「どうして分かったの?」と言わんばかりの顔でシュヴァールを見つめ固まる。
すると、シュヴァールは思わず吹き出し笑う。
「君は無邪気だね。特別な力を持って生まれても、女の子というだけで期待されなくなる。運命は理不尽だ…」
そう話すシュヴァールを、ソナはじっと見つめていた。




