勇者決戦編 -6
そう言いこぼすレギルと同様、何が起こったのか分からず呆然としていたヴァイスは、シュヴァールに手を握られていることに気づく。
「シュヴァールさん、ありがとう」
「聖魔力纏い。無事で良かった。このまま息を合わせて。君の魔法に私の魔力を込める。それでレギル様と互角に戦えるはずだ」
ヴァイスは頷き、全身から燃え上がる白炎を掌に集約させる。そして、シュヴァールはその手の甲に手のひらを添え、炎に聖魔力を絡める。
「聖炎魔法、アグニ·ソラニス」
二人は、まるで太陽を雲にそっと乗せるかのように、手のひらを天に向けて添える。すると、燃え揺らめく炎の塊は空に向かって飛んでいき、圧縮されていた灼熱が解き放たれる。
それは白く照り輝く太陽が降り落ちるように、レギルの頭上へ迫る。
「神聖光魔法、スーリア·ミーティア」
レギルの周囲に形成された数多の光粒が、まるで白鳥の群れが太陽に向かって羽ばたくように、迫り来る白炎の隕石に飛び立つ。
その二つの魔法が衝突した瞬間、ヴァイスの脳裏に、忘れるはずもなかった夢現な声が優しく流れる。それはヴァイスの母親、ソナの声。
聖王輪転。今の私がヴァイスに贈れるのは”無為への愛情”だけ。これからも貴方の幸せを願ってる。
──彼女が生まれながらに与えられた天使の加護、”慈愛”がヴァイスに譲渡される。
「母さん?…また会えた」
そのとき、ソナの気配を感じ取ったシュヴァールは、ヴァイスの方を不意に見つめ、涙を流す。
「ソナ…。思った通り、君は来てくれたんだね」
──今でも鮮明に覚えている。彼女との出会いは三十六年前、秋入梅の朝だった。




