勇者決戦編 -5
「術式による結界の抽出…時間軸を合わせる…世界を結界で捉えて…」
すると突然、ガス抜きされたライターのように、ヴァイスの炎は欠片も出なくなり、唖然とした顔でシュヴァールの方を見る。
その無力な様子を見たレギルは、冷め呆れた顔で睨む。
「結界内にある全ての自然魔力の完全浄化が完了した。つまり、お前の魔法が自然魔力に触れた瞬間、魔法は浄化され自然魔力に還るということだ。もう諦めろ。これが現実だ」
両腕を横に広げ、勝ち誇るレギルの方にヴァイスは落ち着いた顔を向け直す。
「レギルさん、俺たちが諦め悪いことくらい、知ってますよね?」
それを聞いたシュヴァールは、微笑みながらヴァイスの傍に寄り、頭にポンッと手を添える。
「魔王解放直後は現実に具現化する余裕がなかったが、今は違う。それに、君の信じる心が私に力をくれたようだ。ヴァイス、ありがとう」
──真聖時間結界魔法、クロノス・インペリウム。
レギルの結界の内側に、シュヴァールは現実との時差が僅か0.01秒の別天結で構築した別次元の世界を、結界として顕現した。それは結界同士の押し合いにより、時間軸が必然と現実に引っ張られると同時に、完全浄化されていた自然魔力を中和した。
レギルは舌打ちをすると、歯を食いしばり、純白の光を二人に目掛けて放つ。
しかし、一つはシュヴァールの体の前から消え去り、一つはヴァイスの体に弾かれる。
「なぜだ?結界を無力化したところで、俺の魔法が優位なのは変わらないはず…」
そう言いこぼすレギルと同様、何が起こったのか分からず呆然としていたヴァイスは、シュヴァールに手を握られていることに気づく。
「シュヴァールさん、ありがとう」
「聖魔力纏い。無事で良かった。このまま息を合わせて。君の魔法に私の魔力を込める。それでレギル様と互角に戦えるはずだ」




