魔王決戦編 後編 -10
「神滅魔力防御」
バリエンテの放つ神滅魔力圧によって、結界内の自然魔力は完全浄化され、結界は崩れ去る。
突然の状況に力が抜けたように呆気を取られ、動きが止まったアルバを見たバリエンテは、焦り惑う足で踏み出し、駆け迫る。
そして、バリエンテはアルバの目前で踏み止まり、その顔に剣を突き立てる。
「兄上、もう決着だ。俺のことは忘れてくれ」
「まだ、何も終わってないじゃないか。今までもこれからも、俺が居る世界には、お前もいるよ。お前の世界には、俺は居るか?」
アルバの微笑む頬に熱く垂れ流れた汗が、バリエンテの背中に垂れる冷や汗を際立たせる。そして、アルバは再び結界を構築し、ありったけの自然魔力を掻き集める。
「聖光魔法、スーリア·ルチルス」
二人に太陽が差し込むように、純白に眩く光は天から降り注ぐ。
「神滅魔法、ヘリオス·インスレクト」
──憧れていた。それを超えた先には、何があるのだろう。俺は何者かになれるのだろうか。
身を捧げるように両腕を大きく広げ、闇の一閃を深く刻まれたアルバは、煌々とする空が薄れゆく中で、小さく口を動かす。
「強くなったな」
──バリエンテは、もう守られる存在じゃなかった。そんなお前が選んだ居場所を、俺は否定していた。この敗北を受け入れることに意味なんてない。ただ、俺はたった一人の兄として、バリエンテの生きる未来を信じている。
バリエンテは、高揚感と喪失感が混沌とする中、ふと足元を見下ろす。
見えないほど遠く前を走っていたはずの大きな背中は、バリエンテが佇む爪先のすぐ傍で、寂しく地に伏せていた。しかし、それを踏み越えることも背を向けることも出来ず、呆然と立ち尽くしていた。
そのとき、忙しない足音を立てながら、シュヴァールが二人のところへ近づいて来る。
そして、アルバの遺体を見て泣き叫ぶシュヴァールを、バリエンテは無気力に見つめていた。
「バリエンテ、一つだけ聞かせろ。どうしてアルバ様を殺した?」
恨みの視線を向けるシュヴァールに、バリエンテは不敵な笑みを浮かべる。
「俺が魔王だからさ」
──俺の居場所は俺が決める。俺は消えることのない罪を背負ったとしても、生きることを選んだ。それに意味がないとしても、生きる意味は変わらない。だから、俺は自分自身に罪を贖う。それが俺の答え…。
これで後編は終わりです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
咲き誇れ 白彼岸花 君を見ゆ
影もろともに 秋霖に散る
この意味は以下の通りです。
白い彼岸花よ、美しく存分に咲きなさい。それを見る月の光も、しとしとと降る秋の長雨の中で、ともに散りゆく運命にあるのだから。
そして、私の解釈は以下の通りです。
純白に輝く信じる心は、純黒に染まった絶望には届かない。




