魔王決戦編 後編 -3
最強の兄上が誇らしく、羨ましかった。しかし、憧れてしまった。超えられなくても、誰かに期待され認められて、自分も何者かになれるのではないか。そう思ってしまった。
そして、アテン王国暦22年、バリエンテは魔界調査団副団長に就任した。
分厚く重みのある雲がたなびく雪催いの空の日、バリエンテは、いつものように第二部隊を率いて魔界調査へ出発した。
魔界調査団員の中には、三級程度の水属性魔法しか使えず、王家の肩書きと剣術だけで副団長という地位についたバリエンテを、良く思わない者もいた。しかし、魔力を纏った剣技は一級魔法を凌駕し得る、まさしく王家に相応しい圧倒的な実力だった。それを認める者たちが、第二部隊に所属していた。
それを頭では分かっていながらも、後ろをついて歩く三人の隊員が談笑する声が、バリエンテの鼓動を早め、締めつける。そして、耳を塞ぐように足早になり、どんどん奥へと踏み進む。
暫くして、バリエンテは自然魔力濃度がだんだんと濃くなっていることに気づき、足を止めた。
「呼吸がし辛いな。魔力で守れば、さらに奥に進めそうだな。これは新たな発見だ。さっそく皆に…」
バリエンテが後ろに振り返ろうとした一瞬、肌が凍りつくような魔力圧を感じ取り、不意に手足が震え、息が浅くなる。そして、黒く佇む影にゆっくりと瞳を向ける。
「お前は何者だ?」
その視線の先には、真っ黒な影に覆われた体に、黒い翼と二本の角、そして、赤い眼光が見える。
「我は悪魔…。闇を宿す人間よ、我が倦厭を潤す糧となって死ぬがいい」
バリエンテの視界が黒い霧に包まれると、浅い呼吸が荒くなり、だんだんと息が詰まっていく。




