魔王決戦編 前編 -7
シュヴァールは、息を忘れたように呆然と立ち尽くし、震える腕を強く握る。
「分かっていた。アルバ様が勝てない相手に、俺が勝てないことくらい…。どれだけ貴方を思っていても、復讐に変わりはないことも…。それでも、戦わずにはいられないんだ。」
そのとき、梅雨晴れに咲く純白の紫陽花は、着飾る”無慈悲な敗北”の隙間から覗く真花に、微かな天日を浴びせる。
天使の誓約、”別天結”。──天使の加護、"慈悲"に宿る真の力。別次元の「聖なる力に満ちた異空間」を顕現し、あらゆるものを閉じ込める。
それは、天使が耳打ち囁くように、シュヴァールの空っぽな脳裏に過り、魔法を浮かび上がらせる。
「真聖時間魔法、クロノス·エデン」
シュヴァールは虚ろに瞬くと、目に映る風景から一切の光を奪い、無感に歪んだ世界の真ん中に立ち尽くすバリエンテを飲み込む。そして、包み隠すように、完全に時間が停止した世界に閉じ込める。
”魔王”バリエンテの封印を見届けたシュヴァールは、アルバの遺体を抱きかかえると、ゲリラ豪雨に打たれるように、遣る瀬無い気持ちが内から込み上がり、冷たく乾いた瞳でアルバの遺体を見つめる。
「さぁ、帰りましょう。僕らだけの居場所に…」
その日、シュヴァールは王国へ帰ると、初代国王に二人の王子の死亡と魔王の存在を伝え、姿を消したのだった。
それから千年以上の時が流れ、現在へ…。
「私は永い空白の時の中で考え続けました。あの日、もし私が隣にいたら…。その答えを今、知りたいのです」
唖然としていたレギルは、微笑みながら軽くため息を吐き、肩を落とす。
「出会った時から相変わらず、お前は生意気だな。これが、お前の待ち望んだ運命だったとしても、俺は俺のために、ここに立っている。魔王を倒して、魔界に閉ざされた王国を救う勇者になるために。さぁ、お前の望み通り、二人で始めようじゃないか。交錯する運命の答え合わせを」




