魔王決戦編 前編 -4
雪に濡れる冷たい窓ガラスに触れ、薄暗い部屋で程よい自然光に浸る”団長側近”シュヴァールは、ぼーっと外を眺めていた。
今日は嫌な天気だ。また、あの日のことを思い出す。きっと、アルバ様も…。
まだ暗い明け方だった。悲嘆を隠すような微笑みをするアルバは、いつも通り魔界へ出発した。その背中を追いかけようとしたシュヴァールは、降り積もる白雪が喪失感に苛まれた心を一層際立たせ、足を竦ませた。
そして今、誰もいない部屋に閉じ籠もるようにアルバの帰りを待っている。
「言えるわけない。もう忘れようなんて…。もう諦めようなんて…。俺は…そんな情けない自分が、アルバ様より正しいと思ってしまうのが怖い。でも、あなたの隣が俺の居場所…そうですよね」
シュヴァールはカーテンを両手でバッと強く閉めると、真っ暗になった部屋の扉を開け、大きく息を吸って駆け出す。
魔界最深層。足取りが重く、息が詰まるような閉塞感と不気味なほどに静寂で冷たい空気が纏わりつく。 シュヴァールは吐き気を抑えるように口に手を当て、ゆっくりと奥へ奥へと踏み進む。
すると突然、目の前の光景に足を止める。
シュヴァールの瞳に映るのは、深緋色の血溜まりにうつ伏せで倒れる人の朧影。その顔を伺うように、じっと見つめながら、ゆっくりと寄り近づく。
「アルバ…様?」
その体温が奪われたように蒼白に眠る顔に、見開く目を向けるシュヴァールは、その目を疑うように瞬きを繰り返す。




