魔王決戦編 前編 -3
宵烏の黄昏、パチパチと火花が弾ける音を立て始めた線香花火から、牡丹飾りを待つ線香花火に面映ゆく火を渡すような時の流れに、二人は身を委ねていた。
「シュヴァール。君に宿る白藍色の魔力。それは俺も初めて見る、未知で異質な属性だった。故に、君自身ですら理解出来なかった。…でも、ここで俺と出会ったことも運命なのかもしれないね。強くなりたいのなら、俺と一緒に来るかい?」
蝉が静まる夜更け、満天の星空の下で、手を差し伸べて立つアルバを見上げるシュヴァールは、その手を掴み取り、立ち上がる。
「はい。あなたの隣を僕の居場所にさせて下さい」
──魔力属性、”時間”。これが理不尽な運命の答えだった。
こうして二人は師弟として新たな運命を歩み始めたのだった。
それから時は流れ、十一年の歳月が過ぎた。
雪混じりの雨が降り溶ける薄曇りの夜、アテン王国第二王子、魔界調査団”副団長”ヘリオス・バリエンテが魔界で失踪した。
さらに、彼が率いていた第二部隊に所属する隊員三名の遺体が魔界で発見された。
暫くして”第二王子失踪事件”の噂が王国各地で囁かれ、次第に「バリエンテ王子が隊員を殺したから逃げている」、「王家がバリエンテ王子を匿っている」と憶測が混じった謂れもない噂が広まっていった。
そうして、手掛かり一つなく四年が過ぎる頃には、この事件は世間の賑わいから忘れられ、”バリエンテ死亡説”だけが微かに残っていた。




