魔人決戦編 -8
それはだんだんと指から手の甲、手首を通り、腕を燃やしていく。それを振り払う反対の手にも炎は燃え移り、やがて、体全体が燃え上がる。
それに藻掻き苦しむ魔人の悍ましい悲鳴が、ヴァイスの耳を劈く。
「嫌だ…死にたくない。やめろ。痛い」
──いや、俺なんか早く死んでしまえ。遥か昔、俺は人間だった。しかし突然、黒い悪夢に襲われた。そして気づけば、俺はただの邪悪に取り憑かれた死人…。白い魔力に怯え、逃げ隠れたことで、俺自身が悪夢となってしまった。
魔人を形成していた魔力は、自然魔力に還っていき、二度と魔人の体に戻ることはない。そして、魔人が自然発生の灼熱に触れ、全身に燃え広がった白い炎は、邪悪を焼き尽くすまで消えることはない。
それから程なくして、遺灰のように散っていく魔人の体は、純白の炎と共に跡形もなく消えていく。
それを見届けたヴァイスは、大きく深呼吸をし、肩を落とす。
「憎しみと別れて残るのは、母さんとの幸せ。シュヴァールさんがくれた幸せ。そして、これからの幸せ…。母さん。いつか必ず、たくさん願う幸せを天国まで届けるから、それまで待っててね」
ヴァイスは背中の熱が冷めていくのを感じながら、目を瞑り、空を仰ぐ。




