陽暈の盾編 -5
それはまるで、灰色の雪が降る真夜中、無灯火の道端で寂寞に蹲っていたヴァイスに、シュヴァールが傘を差し掛け、レトロランタンの灯りを照らし向けるかのような日々だった。
静寂が沈み落ちる闇に包まれた魔界の中を、ヴァイスは頼りない小さな火の玉で路面を照らしながら、一心不乱に走っていた。
「紫色の炎…。噂の場所と封鎖区域が一致したのは、きっと偶然じゃない。もう本庁の許可を待ってはいられない。そこにいるはずなんだ…」
だんだんと息苦しくなり、肌がピリピリと刺激されるような感覚が、ヴァイスを謎めく大きな黒い影に導く。
そして、草木が焼け焦げたような炭苦い匂いが、ヴァイスの足を止め、それを辿るように視線を誘う。
その瞳の先に映る黒く染まった全身の肌、赤い眼光、ヒリヒリと伝わる魔力圧。そして、ヴァイスの震える手が根源たる追憶を覚まし、脳裏に訴えかける。
絶望を捨てろ。恐怖を捨てろ。切望した殺意を呼び起こせ。
──炎魔力防御。炎魔法、ルベル・クレシエンテ。
熱が湧き上がる鋭い赫閃の刃を強く握りしめ、ヴァイスは魔人に向かって走り出す。
しかし、その刃を魔人は黒く硬い片腕で受け止め、そこから火花が立つ。
「魔力量は悪くない。だが、やはり人間は弱い」
その耳を突き刺すような魔人の悍ましい声を聞いたヴァイスは、眉を顰めながら唸る。
「黙れ。お前が…母さんを…」
「カアサン?そんなものを俺は知らない。だが、なぜだろうな?俄然、愉悦が滾る」
すると、魔人は紫炎を纏った拳でヴァイスの腹を殴る。




