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魔法学校編 -7

 武闘館裏の日影、コンクリートの冷たさを背中に感じながら、湿り気のある地面にヴァイスは座り込む。


「見たかったなぁ、最果ての景色」


 溢れる涙を堪えるように額を指先で押さえ、歯を食いしばる。

 閑静(かんせい)な空間を破る、落ち葉が踏み砕かれたパリッという音で、傍に立つ人影に気づき、指の隙間からゆっくりと覗き見る。すると、そこに立っていたのは、薄ら微笑みながら見下ろす”次席”ノルク・グラートだった。


「お前だけだよ。あの結果を見て、そんな顔をするのは」


 “最終成績四位”と書かれた紙を握りしめ、しわくちゃな顔で走り過ぎていくヴァイスを見かけたグラートは、その後を追ってきていた。

 ヴァイスは唖然とした面持ちを浮かべ、額から手をゆっくりと下ろした。


「ノルク・グラート。お前に一つだけ聞きたいことがある。…俺とお前との差は一体何だったんだ?」


 グラートは(あご)に指を置き、スーッと細く息を吸う。


「そうだな…言うなれば”歴史”。それは俺が持つ三大貴族という権力と情報であり、遥か昔より受け継がれる(ことわり)だ」


 ヴァイスは鼻水をすすりながら涙を拭き、立ち上がる。


「確かに、この世界は魔法という武力で支配されている。でも、そんな答えじゃ納得できない。ちゃんと、この目で確かめたいんだ」


 グラートはその眼差(まなざ)しを見つめ返す。


「つまり、俺と戦いたいと。相変わらず諦めが悪いな」


 グラートはため息を吐くと、ヴァイスを通り過ぎた先にある武闘館の入り口、重厚な扉の前に立ち、木陰(こかげ)に降るような鋭い視線でヴァイスの方を振り向く。


「いいだろう。不変の条理というものを教えてやる」

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