表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/82

魔法学校編 -3

 グラートは、まるで赫閃(かくせん)が揺らめく星の欠片(かけら)のような、その不格好な飛行魔法を呆然とした面持ちをしながら、目で追いかける。


 勢いだけの制御不能の飛行…。やはり、あいつは面白い。だが、何をする気だ?


 ヴァイスは拳を握りしめ、振りかぶる。


「炎魔法、フレイム·ブロウ」


 拳から燃え上がる炎は蛇が巻き付くように渦巻く。緋色(ひいろ)蛍火(ほたるび)のような、その小さな炎の拳は、空を()らう怪物のような淡碧の氷塊に衝突し、白霧(はくむ)が噴き舞う。

 気づけば、ヴァイスは空を見上げて倒れていた。炎魔力防御(フレイム・ソリッド)が解け、冷気が肌に触れる。荒く吸い込む空気が喉を突き刺し、白い息が視界を曇らせる。耳に残るのは、凍った水たまりを踏みつけたようなバリバリという音と自分の荒々しく掠れた叫び声だけだった。

 はっとしたように、腕の痛みに耐えながら起き上がろうとするヴァイスを見て、グラートはため息をつきながら近づいて来る。


「もう十分だろう。今のお前に足りないのは強さではない。自分を許す弱さだ」


 春暁(しゅんぎょう)に照らされ溶けゆく雪のように、ヴァイスは全身の力が抜け、両手を広げて仰向(あおむ)けになる。


 俺は…負けたんだ。


 湖畔(こはん)()でる朔風(さくふう)のように、グラートはヴァイスのそばを静かに通り過ぎ、立ち止まる。そして、背中越しに視線を向ける。


遠久(えんきゅう)彼方(かなた)でも、俺はそこにいる」


 その声は、ヴァイスの赤みを帯びた冷たい耳に吹き込む。そして、グラートは空へと吹き舞う旋風(せんぷう)に乗って、あっという間に消え去った。


 そうだ、まだ終わってない。行かなきゃ。


 拳を握りしめながら、ヴァイスは立ち上がる。フードを深く被り、マフラーを口まで覆うように引き上げ、歩き出す。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ