第6話 遠回りした夢の果て(国王視点)
と、そんなことがあったわけじゃ。
当然じゃが、ミラベルとやらが虐められたなどどうでもよいが、念のため行った騎士団の偵察部隊を入れた調査でもアリア殿は白。
実行犯は愛国主義の貴族の子弟で、ミラベルなどという小娘が王子に近付き、聖女を蔑ろにしたことに怒っていた。
むしろ褒めてやりたい。
やり方についての注意は行った上でアリア殿からも助命の嘆願があったので、当然許した。
王子は廃嫡。
騎士団長と魔導師団長の息子も廃嫡。
全員、僻地にばらばらに飛ばした。
『なぜ私が?なぜお飾りのアリアなどを優先されるのですか?血迷ったのですか?』などと言いおったエリオットに関しては首を切り落としてやろうかと思ったが、口を封じるにとどめてやった。
正妃のやつが嘆願してきおった。まったくもって腹立たしい。
まず先に聖女で婚約破棄の被害者たるアリア殿の許しを得てからの申し出であったため、それで手打ちにしてやったのだ。
それから、侯爵家はあろうことかアリア殿を嫌い、虐待に近いことをしていた。
正妻の娘ではないアリア殿を嫌った正妻とその息子レオンが筆頭になってアリア殿を蔑ろにし、正妻を恐れた情けない侯爵は見て見ぬふりをした。
そして年数が経ち、その状況に疑問を持たなくなり、さらには聖女になるような天才性も理解できずに嫌悪しおったらしい。
許せん。
しかも調査を受けて余が決断を下す前に神殿が侯爵領からの撤退を決めた。
さすがにそんなことを許容するわけにはいかず、侯爵は強制引退。レオンも廃嫡。
今回の件でアリア殿が世話になったと言うジクス神殿長の妻となるルーネの実家がちょうど陞爵するのに良い機会だったので与えておいた。
彼らは娘がなしたことを決して驕らず、謙虚にアリア殿に礼を言い、丁重に、そして丁寧に暖かく遇したようだ。
アリア殿にとっては生家ではあるので、部屋などもそのまま残しておいて、アリア殿が休めるようにしておくとのことだ。なんと素晴らしい。
余自身がこの決断を後から褒め称えるくらいには良い事案になった。
そしてミラベルとかいう小娘が王子との結婚を願ったのが全てのことの発端だった。許すまじ。
叩けばよくこれでアリア殿を追い落とせたなと思うくらいにはたくさんの醜聞が出て来た。
入学試験での不正、学院内の各種試験での不正、王子及びその他の男子との不純異性交遊、学院内で収奪した品々の勝手な販売、教師との不純な交遊と脅迫……バカ息子をはじめ周囲にいたものの目の節穴っぷりが次々に明らかになった。
当然学院卒業は取り消し。各種の賠償金や慰謝料を請求した結果、まぁ払えない。
ただ、それでは許さん。
一族のものがむしろ応援していたこともあわせて実家につきつけて実家ごと破産させた。
通常連座刑を行う際、特定の誰かは救いたいという話が出るものじゃが、一人も出なかったという悪辣ぶり。
エリオットへの罰のため、きっちりエリオットとミラベルを結婚させ、実家でも払いきれなかった金を請求している。僻地でなんとか返せたら凄いじゃろうな。死ぬまで頑張って借金を返せ。
そして力の限りアリア殿に謝罪した。
全てを明らかにし、誠心誠意謝った。
全て余の失態じゃ。学院の声が届かぬ、貴族たちの声が届かぬ、神殿との距離感は思いのほか遠かった。バカ息子の教育も、取り巻きにつけたものたちの質の悪さも、聖女の功績を喧伝しなかったことも。全て。
しかしだからと言って諦めるわけにはいかぬ。これぞ余の一世一代の大勝負。その後の国と余の将来の全てをかけた渾身の謝罪じゃ。
神殿長からはかなり厳しい言葉を吐かれたが、それもアリア殿のことを思ってじゃろうから耐えた。
するとアリア殿は許してくれたのじゃ。
むしろお体に障るから無理されませんようにとこちらを気遣うような言葉までつけてのう。
なんて良い子なのじゃ。
辛かったじゃろうに。それを過去のものとして罪あるものを許すなど、まさに聖女じゃ。
アーサー、一生分の運を使い果たしたかもしれぬが、頑張るのじゃぞ。
もしアリア殿を泣かせるようなことがあれば、その時はこの余が国宝である宝刀"神を滅すもの"によって斬り捨ててやるからな。
そしてアーサーだ。今回の件は全てをアーサーに救われた。
あれは状況を完璧に理解していて、そもそも兄の危うさを理解しており、こういう事態も危惧してアリア殿との仲を保っていたらしい。見事じゃ。
発端が一目ぼれというのが可愛いのう。
改めて婚約したいと2人から申し出があったときには、まどろっこしいことはやめてもう結婚しろと言ってしまった余は悪くない。
が、一応アーサーが来年学院を卒業するのを待つことになった。
珍しい嫁が年上の婚約になってしまったが、本人たちが望んでいる。
余にとっても嬉しい。国としては絶対に成立してほしい。いや、結婚してほしい。
誰の文句もなく婚約は成立し、気は早いがアーサーを王太子にした。
これで将来は安泰じゃろう。
なお、唯一の懸念となったミラベルの背後についてじゃが、洗っても帝国の関与はなかった。
ということはあれじゃ。私利私欲だけで国を滅ぼしかけたということで、罪は重い。
全員の処分がふさわしいものじゃったと確認できた。
嘆かわしいことじゃ。
むしろ帝国側は婚約破棄されたアリア殿に手を伸ばそうとした兆候があったらしい。
優秀じゃの。
そんな一連の流れを何とか乗り切った余は、ただただアーサーとアリアが残ったことを心から嬉しく思う。
2人の結婚を心から祝福する。
「おめでとう」
「ありがとうございます、父上!」
「ありがとうございます、陛下」
余の前で跪く、仲睦まじい2人を見ながらのう。
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