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第4話 このバカどもが!(国王視点)

今までのやり取りを聞いただけで、このバカが取り巻き連中も含めてよってたかってアリア殿を攻撃したことは目に見える。


余は騎士団長であるベリオールに指示を出す。

彼はすぐに退席していった。

探索と調査に優れた偵察部隊が騎士団にはある。

ことの重要性はわかっているはず。

すぐに探してくれるじゃろう。


「父上!どういうことですか?なぜアリアを探すなどと……彼女はミラベルに嫌がらせをするなどした悪女なのです!」

もうこのバカを息子とは思わん。


「このバカものが!聖女の仕事でほとんど学院にいないアリア殿がどうやって嫌がらせなどするのじゃ?そんな小娘に?証拠でもあるのか!!」

「父上!ミラベルをバカにするのはやめて頂きたい!それに証拠はあります」

「なんだと?」

このバカは全く理解していないらしい。

もしアリア殿が帝国に降ったりしたら、この国は終わりなのだぞ?

そもそも婚約破棄の時点でお前の立太子自体が破談だ!


「陛下、証拠に関しては私が取得しております」

そう言って進み出たのは魔導師団長の息子。

おい、ラグル……貴様の息子が何か言っているぞ?

そもそももし万が一、そんなことはないだろうが、もしもアリア殿がやっていたとしても揉み消す方向に走るのが貴様らの役割だろうが?

なにを一緒になって鬼の首を取ったかのように調子に乗っているのだ?


お前も売国奴なのか?

もしくは王子に何か恨みでもあるのか?


「ギード、なぜそれを私に言わんのだ?そもそも本当なのか?」

「父上はアリアと親しい。それでは揉み消されてしまうではありませんか。陛下。私はこのような悪を見逃せません。なので、エリオット王子にご相談したのです」

余が褒めると思ったのか、クソガキが!

ふざけたことを抜かしおって。


「で?その証拠とは?」

ラグルは息子の説得は諦めて話を聞くことにしたらしい。

余は貴様のことは信じていたのだが、大丈夫じゃろうか?


「魔導師団にて研究していた自白剤の設計書を見て僕が作ったものです。ミラベル殿に嫌がらせをしていた張本人を発見した我々は僕が生成したこの薬を使いました。すると彼女たちは一様にアリアに命じられたと答えたのです。そのためこの通り記録書類も書かせております。これが証拠です」

「そういうことです、父上。私は聖女という名誉を得ながらこのような行動に走ったアリアと添い遂げることなどできません」

「自白剤じゃと?」

余はさらなる脱力感に襲われる。

それこそまずは貴様の父親に話すべきじゃろうが!

何度も言うが、アリア殿こそ国母なのじゃぞ?

そしてエリオット。聖女はただの名誉ではないのだ。実務を伴う職で、とても重大な実務で、それがなければ国が成り立たぬのだ。

教師どもは何を教えていたのじゃ?


しかし余の怒りをよそに、もっととんでもないことをラグルが言い出した。

 

「まさかギード。貴様、それは魔導師団で開発したと言ったな?もしかして昨年末に作ったやつか?」

「そうです、父上。この自白剤は捕らえた帝国兵に使うものと聞いております。であれば効果は本物のはず」

その言葉を聞いて天を仰ぐラグル。

まさかアリア殿がやったのは確定なのか?

余はいつの間にか口に貯まっていた唾液をごくりと飲み込んだ。


「このバカ者が!!!!!!!!!!」

「なっ?」

そしてラグルが怒鳴った。間違いなく力の限り。

その声は怒号として鳴り響き、会場中がこちらを注目した。

もとから注目されてはいたが。


「あれはパーティー用の遊びの自白剤だ!」

「はぁ?」

そして余の全身から力が抜けていく。

あの年末年始を祝う王城の祝賀会で使われたあれか……たしか与えた側が望むとおりの自白をするという効果で、警告を与えるために面白おかしく使った。


例えば大臣に『国王の指示でこっそりお金を貯めて王妃に贈り物を買いました』とか、騎士団長に『私は王の盾ですが本当に守りたいのは妻です』とか言わせて遊んだあれだ。

つまり、『アリア殿の指示でやった』と魔導師団長の息子が言わせたかっただけということになる。

しかもこの場では言わないが確かアリア殿が作った魔道具が元だったはず……。

末恐ろしい才能に震えるとともに、悪用されてはたまらないから遊びで使わせたのだ。褒めることも雰囲気的にできなかった。


「貴様も祝賀会には出ていただろうが!本心とは違うことでも言わせられる魔道具として遊びに使っていただろう!!!」

「なっ……」

魔導師団長の息子が呆然とする。

もうそのまま死ね。

役立たずが。


鬼の首を取ったように喚き散らしたことが、ただ自分の悪い考えによるものだったと知ってどんな気分なんだ?



「エリオット……」

「はい……。これはなにか手違いが……。ミラベルへの攻撃は実際にあったもので、……」

「そんな娘、仮にどうなったとしても関係な……うわっ」

少しだけ殊勝になったバカ息子に対して余が怒りにまかせて喚き散らそうとしたとき、急にあたりが黒く輝いた。



そして、何かが降ってきた……。

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