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第2話 暖かい人々(聖女視点)

「どうされたのですか!?」

「ジクス神殿長。実は……」

私が夜会を退出してルーネ様に案内された部屋で沈んでいると、ジクス神殿長がやってきました。

そしてルーネ様がさっき夜会で起こったことを説明してくれました。

私はあまりの悲しさに呆然としながら横でただ座っていました。


「なんということを!?私は国王陛下に抗議してきます!!!」

そしてジクス神殿長は立ち上がり……ましたが、私が彼のローブの端を掴みました。

行ってほしくない、とそう思ったのです。

彼はルーネ様の婚約者だと言うのに……。


「アリア様?」

「ごっ、ごめんなさい。私……その……。ルーネ様、すみません」

「いいのですよ。あんなことがあって不安になれば、顔を知る私たちに甘えて頂ければ結構です。婚約者さんも聖女様に頼られて嬉しいでしょうし、なんならあげましょうか?」

「えぇ……?」

「ちょっ……ルーネ!」

ジクス神殿長はその身に強大な魔力を宿し、聖、火、水、風の4属性魔法を操り、さらには魔導神の加護を持つと言う凄まじい魔法使いです。

神の啓示もあって若くして神殿長となりましたが、職務に忠実すぎるために婚期を逃し、それを本人も全く気にしていないまま30歳を超えたという筋金入りの神殿長です。


そんな神殿長に恋をする者は多くいますが、ルーネ様もその一人でした。

ただ、ルーネ様が他の方と違ったのは、自らも聖属性に秀でた魔導士であり、既に魔導師団の仕事をいくつもこなしている人です。

彼女は溢れる才能を生かして神殿関係の仕事を引き受けながら神殿長に接近。

猛アタックの末になんとジクス神殿長と婚約したとても積極的な人なのです。


だからこそあげましょうかという言葉は衝撃的でした。

なにせ私も彼女のアタックに協力したのですから。

その相手であるジクス神殿長に縋った私が悪いのですが。


「すみません、冗談ですよ。そんなに酷い顔をしないでください。わかっていますから」

「そうですとも。寂しいなら私たちが寄り添いますし、相手を探したいなら探します」

「ありがとうございます。でも、王子様に婚約破棄された私を欲しがる人なんかいないのでは?」

自分で言っていて悲しくなります。


「全く問題ないでしょうね。あなた自己認識がおかしいわ。でも言っても仕方ないわね。アーサー様を呼んで来るわ」

「それがいい。アリア様は謙虚な方です。それこそ聖女のような。そしてそんなあなたを支えてくれる人はちゃんといます。今は考えすぎないように」

2人が励ましてくれます。それにアーサー様を呼んでくださるなんて……。

私は過去のお仕事で酷いことをしたことがあります。

 

聖女として相応しくない仕事です。でも、それで助かったと言ってくれたのがアーサー様です。

彼はもし今後そのことで私が不利益を被るようなら全て自分が責任を取るとまで言ってくれました。

でも、ちゃんと話せるでしょうか。

婚約破棄されてしまいましたなんて聞いたら、軽蔑されてしまうかもしれません……。


それに他にも……。

昨年には魔導師団の方から聞かれて遊びの魔道具を作ったりも……。

遊びだったのに暗躍に使われてはたまらないと言うことで急遽注意喚起をすることになったいわくつきの魔道具です。

報告を聞いて対処していただいたものの、震えていた国王陛下にはきっとよく思われてはいないでしょう。

 

「ほら、考えすぎてはダメよ。ジクス神殿長の言う通りだわ」

ルーネ様が優しく抱きしめてくれます。

その暖かさに涙が出てきます。


「ありがとうございます」

小柄な私はルーネ様に胸を貸していただき、泣かせて頂きました。

 


「そもそも王子は何を考えているのだ?アリアを手放して、自殺願望でもあるのだろうか?」

ふとそんなことを神殿長が仰ったように思えますが、聞き間違いですよね?

私は2人の優しさにしばらく甘えてしまいました。

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