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第1話 婚約破棄(聖女視点)

「アリア、君にはうんざりだ。僕たちの婚約は解消だ」

今日は学院の夜会。まもなく卒業していく私たちを祝う、学院の一大イベントだ。

多くの学院生は将来を誓った相手とともに出席し、その姿を記憶に焼き付け、実家に伴侶として紹介をすることになる。

この学院は貴族か優秀な平民のみが通える学校であり、ここで見つけた相手を否定する必要はない。

もちろん高位貴族であれば相応の相手であれば、などと細かい条件は付くが……。


そんな夜会の日、婚約者であるエリオット王子からは特に何の連絡もなく、慣習であるドレスやアクセサリーを送られることもなかった私は、諦めの境地で神殿の神官長が見繕ってくれた衣装で参加した。

そんな私に、酷い言葉を投げかけたのが、そのエリオット王子だった。


「王子……なぜですか?私は聖女として民を救うべく努力してきましたのに」

「なぜ?だと?お前はこのミラベルにやったことを僕が知らないとでも思っているのか!?」

「はぁ……?」

私の婚約者であるはずのエリオット王子にぴったりと寄り添っている可愛らしい女性……それがミラベル様でしょうか?

申し訳ないことに、存じ上げません。


学院入学前から神殿でのお仕事をしている私は学院に通う時間が他の学院生より少ないのです。

もちろん一般的な聖女の仕事である毎日のお祈りは学院生のため免除してもらっています。

これを担ってしまうと、そもそも毎日遅刻確定でお昼過ぎからの登校になってしまいます。


でも、国内の魔力循環に淀みがないことを確認し、もしあれば介入して正常に戻すこと。

この聖女として最も重要なお仕事は既に私が担っています。

介入とは魔力をあえて流し、淀みがある場所を特定し、訪問し、聖女の力で正常化するのです。


月の半分はこのお仕事に時間を取られてしまいます。

そのため、学院に登校した時も補習授業をして頂いています。

学院生には戦争に赴くものもいますし、外部の研究機関や商会などと協力して事業を行うものなどもいます。

こういった者たちのための補習はもともと想定されていて、私はそちらで授業を受けています。


なので、そもそも同級生ではありますがエリオット王子のご様子も知りませんし、学友の方々も実はほとんど知らないのです。


「とぼけても無駄だ!既にミラベルへの数々の嫌がらせを行ったお前の友人は退学処分になっている。皆、お前の指示だと言っていたぞ?それなのによくこの場に出て来れたな!」

「……」

既にお話しした通り、私は同級生とのつながりは皆無に等しいのですが。

しいて言えば一緒に補習を受けている生徒とは会話はしますが、彼らも私と同様に一般の授業を受けている王子様達とは接点がありません。


退学処分になったということは実際に悪いことをしたのだと思いますが、その方々が私にはわかりません。


ただ、そもそも悲しいのは、私はしっかりと聖女の役割を果たしてきました。

そのことは神殿の神官たちが認めてくれている通りで、だからこそ私が今後夜会などに出席することもあるからと言って、今日身につけているドレスやアクセサリーをくださいました。

そういったことを明らかに婚約者である王子様が一切理解されていないことが悲しいです。

泣けてきますね。


「今さら泣いても無駄だ!」

そして投げつけられる言葉の暴力。


私は思わず周囲を見渡しました。

みなが王子様のように考えているのでしょうか?

私がよく知らない女の子に嫌がらせをしたと?


「諦めろ、アリア。証拠は挙がっているんだ。まったく聖女に任命されているというのに酷い女だな」

そう言ってきたのは……確か騎士団長の息子。


「そうだ。僕が開発した自白剤で裏は取れているんだ。表に出さないように巧妙に隠していたのかもしれないが、僕がここにいたことが君の失敗だ」

彼には見覚えがあります。魔導師団長の息子です。

魔導師団は神殿とも協力して淀みの対策に当たることがあるので魔導師団長とは顔を合わせることがありますし、彼は将来を見据えて手伝いに来ていたことがありました。


魔力の淀みは放っておくと魔物を生み出します。

そのため、お仕事の際には魔導師団や騎士団の方が同行してくれます。

そんな彼も私を攻撃するようです。

言っても仕方がないことですが、彼が魔物相手に攻撃魔法を失敗した時に支援してあげたのに、残念です。


「ふん。聖女になったということでようやく国の役に立つのかと思ったが、まさかやっていたことは王子の想い人への嫌がらせだったとは。見損なった。お前はもうレオメットの屋敷には帰ってくるな!」

そして異母兄妹であり次期侯爵のレオンですらこの言いよう……。実家での立場があまり良くない私が実家に頼ることはあまり考えていませんでしたが、このタイミングでの絶縁宣言でした。


どうやら私の援護をしてくれる人はいないようです。

王子様達にとっては私が悪者であることは確定していて、この場で糾弾し、婚約を破棄させるという明確な目的のもとで行動していました。


もう、ここで何を言っても変わらないでしょう。


「アリアさん、行きましょう。あなたはこの場にいるべきではありません」

そう言って私に退出を促したのはルーネ様。伯爵令嬢ですが聖属性魔法の名手で神殿でも有名な方です。

場に応じた丁寧な言葉で話しかけてくれる彼女と共に、私は静かにこの場を去りました。

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