表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

余命宣告





 癌の方か。



 とうとう来てしまったか、私の番が。

ただそんな気持ちだった。



 だがやはり母は違うようだ。

頭を抱え、今にも倒れそうな程に顔色が悪かった。

母子家庭で育った我が家はお金がない。

お金の問題だろうか。



 いや、そうじゃないか。

流石に娘がどちらも病気じゃ、母親としての気持ちが居たたまれない。



「どこの癌なんでしょうか?」



 自分でも驚くほど冷静だった。明日は我が身で色んな想像を膨らませてはいたが、実際に言われたら流石に戸惑うのではないかと思っていた。

だが、不思議なくらいに頭は冴え渡っている。



「ステージ4の末期がんです。恐らく乳がんから始まったのではないかと思いますが、リンパに多く転移していて手術は難しいかと」



 つまり、なす術はないと…

流石に少し動揺した。

癌と聞いても冷静だったのは、周りの人で十人ほどがん患者の話を聞いてきたが、皆手術で治り元気に過ごしていたからだ。

周りで癌で亡くなったのは膵臓癌だった祖母妹だけだ。



 ガタンッ!


「お母さん?! しっかりしてください!!」



 大きな音に驚いて横を見ると、一緒に話を聞いていた母がとうとう椅子にも触れない程気が動転したのか、椅子から転げ落ちてしまっていた。


 私はなんと声をかけたらいいのかわからなかった。

この場合、大丈夫という言葉も違うだろう。

私は冷酷かも知れないが、母の対応は看護師さんに任せて話の続きを聞くことにした。




「私はあとどのくらい生きられるんでしょうか?」



 大体の目安でもいい。今はそれが一番大事だった。

医師は再度資料に目線を投げると、再び私の方に向き直り私の覚悟に答えるかのようにハッキリと答えた。



「転移した腫瘍自体も小さくはありますから、おおよそではありますが、半年ほどでしょう」


「うわぁぁぁぁぁ…」


 とうとう母が大きくも儚い声を出して泣き崩れてしまった。


「お母さん、とりあえず落ち着いて。今まだ話の途中やけん…」



 私は泣き崩れる母にひとまず車に戻るよう伝え、看護師さんに同行を願えるか尋ねると快く受けてくれた。



「それで、私は入院するんでしょうか?」


「いえ、正直ここまで来ると選んでいただいてます。

入院して、進行を遅くする事は可能でしょうが、半年が一年に伸びるかどうかだと思います」


「そうですか…では、入院せずに自由に過ごしてもよいと言う事ですね?」


「ええ、それを望まれるのであれば止めはしません。

お薬も症状が少しでも楽になるようにお出しします」



 正直ホッとした。半年しかないと言うのに入院なんてしてられない。

この医師の対応を冷たいと感じる人もいるだろうが、恐らくこの方は私に合わせてくれている。

私の反応を見て、自由を求めているのを察しているのだ。



「分かりました。ありがとうございます」



 その後、少々注意事項など聞いた私は程なく診断書と処方戦を手にして支払いを済ませ、母のいる車の方へ向かった。



 車が見えるとこまで近づくと、驚くことに姉が来ていた。

そんなに話していただろうか?

確かに姉の家とここは車で15分ほどで着く距離ではあるが…



「びっくりした…いつの間に来たん」


「お母さんから電話があったけん。凄い号泣で歌子が歌子がって言ってその先を全然言わんのやもん。

それで今どこって聞いて来た。


…で? 何やったと?」



 姉も恐る恐るという感じだった。ただならない母の反応に姉も少し不安を感じてるようだ。

こんな反応を見てると本当に申し訳ない。



言いたくない。

言いづらい。


でも言わなきゃいけない。

遅かれ早かれいつかは分かるのだから。




「癌だって。末期の」


「…は?」


「あと半年ぐらいって言われた」


「…入院が?」



「いや…生きれるのが…よ」


「…………」



 特段私自身がショックを受けたわけではないのに、家族のこの反応を見るととても胸が痛い。

何も言えない。

なんて言えばいいか分からない。




 その後は沈黙の中、姉と一緒にきた兄に母の車を運転させて、私と母は姉の運転で家に送ってもらうことになった。


 家から近い病院からの帰り道がこれほどまでに長く感じた事はない。




 家に着くといつも通り、庭で飼ってる大型犬のジョンがおかえりと尻尾を振りながら一吠えする。

兄は母の未だに力の入らない体を支えながら家の中に入って行った。


 私と姉は沈黙のまま。


 ありがとうと言って私も車を降りようとすると、姉が重い口を開いた。



「飲み行く?」


 その提案に一瞬考えた。これからの事をじっくり考えたい気持ちだったからだ。


 でも、今日の今日しなきゃいけない訳ではないし、飲みに行くのはいつもの姉の友達がしてる居酒屋さんだろうから、可愛がってくれてる皆に報告しなきゃいけなよなー…


なんて考えながらしばらく黙っていたが、姉達の気持ちを考えると肯定せざるを得なかった。



「そうね、みんなに言わなきゃね」


「…じゃあ、りみちゃんに電話するからちょっと待って」


 そう言って姉はりみちゃんに電話を掛け、歌子と飲みに行こうと誘って今から迎えに行くと話した。



 そうして私たちは車を走らせ、りみちゃんを拾うとりみちゃんの家に車を置いてタクシーを呼び、姉の行きつけの居酒屋へと向かった。











夜行性なので夜中更新多めです…!

登場人物名間違えがちなので、確認はしてるつもりですが、もし

あれ、だれ?となったら教えてください(;ω;)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ