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異能世界で最強の半グレになる男の話-なお、男女比率は1:10で痴女だらけとする-  作者: 東山ルイ
第三章 どこまでも続くようだ

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045 なにか言いたげなようだ

 と、半グレらしく思慮を巡らせていれば、


『性悪女』


 から電話が飛んできた。神谷海凪だ。どうせ問題だろうと、氷狩は溜め息混じりに画面をスワイプする。


「どうした?」

『海藤組の残党どもが、私のヤサを特定して突っ込んできたわ。返り討ちにしてやったけど、そっちは大丈夫かしら?』

「今、山手の家にいる。こんなところに突っ込んでくる連中はいねェだろ」

『そ、そう。夕実の家に、ね……』

「なにか言いたげだな」

『いえ、別になにもないわよ?』


 あれだ。この世界の男どもは、性に貪欲すぎる女どもを嫌い、同性愛者になるとか聞いたことがある。山手夕実は一応男。なにか勘ぐっているのだろう。


「そりゃ良かった。で、山手から訊いた話だけども」

『ええ。身代わりを出頭させてくれるんでしょう? これで、七王会もマッド・ドッグも騙せれば良いけれど』

「騙せるさ。そういえば、あの幹部はどうなった? ほら、この前拉致した」

『生かして返す理由もないけど、マッド・ドッグへ返却したわ。これで賞金首からおさらばできるわね』

「だろうな」


 つくづく思うが、この業界は暴力ばかりだ。暴力の果ては死。嫌気が差すときだらけである。


「つか、警察(ポリ)やマッド・ドッグの連中が盗聴してねェとも限らん。もう切るぞ」

『え、ええ』


 通話を切り、タバコのほとんどの部分が灰になっていることを知る。勿体ないな、と思いつつ、ソフトパッケージを振る。

 が、なにも出てこない。ペリペリと紙を剥がしたが、どこへもタバコがない。


「あー、クソ。ヤニがねェ。買ってくるか」

「我慢できないの?」

「できたら、とっくのとうに禁煙してるよ」

「だけど、海藤組やマッド・ドッグの連中が目を光らせてると思うよ。街は」

「おれにはシックス・センスがある。あと、タクティカルペンも」


 道具(ピストル)を持ち運ぶのはあまりにも危険なので、刃物同然のペンをお守り代わりに持ち歩いている。相手の頭に刺せば、確実に戦闘不能になる代物だ。しかも、職務質問されたところで、ギリギリ交わせるラインの見た目でもある。


「なら、行ってきなよ。うちはイリーナちゃんでも眺めてる」

「手ェ出すなよ?」半笑いだ。

「こんな可愛い子に手なんか出せないよ」

「どういう意味だか」


 というわけで、タクティカルペンとともに、氷狩は近くのコンビニへ向かっていく。

 山手のマンションは一等地だ。コンビニも徒歩2~3分の場所にある。ここを突いて襲ってきたらなかなかのやり手である。

 街を歩く。相変わらず、すれ違うヒトたちはほとんどが女。香水のキツイ匂いが、氷狩の鼻を苦しめる。


(確かに、ゲイばかりになってもおかしくないわな)


 そう理解してしまうほど、女たちの性欲は露骨だ。こちらをチラチラ見てくるし、意思はピンク色。彼女たちの中では、すでに氷狩とベッドインするところまで描かれている。

 そんな最中、

 氷狩の背中に、鉄製の物体が突きつけられた。


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