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004 この世界では第三次世界大戦が起きたらしい

 なんだか面倒くさそうな展開だ。正直、既読をつけるのも躊躇したくなる。

 だが、開かないことには始まらない。


「なになに……。単なる仕事の連絡じゃねェか。コイツ、いきなりどうした?」


 そうやって彼女のことを訝しんでいると。


「インターホン? 本当に来やがったのか、アイツ」


 家の前まで来られたら仕方ない。仕方ないが、正直面倒くさい。面倒くさいが、放っておくわけにもいかない。

 玄関前に向かい、氷狩はドアを開ける。


「氷狩、ごめんなさい」

「だからなにに謝ってるんだよ」率直な疑念だ。

「いや、貴方が女嫌いなの知ってたのに、儲かるからってVチューバーにならないかって」

「あ? Vチューバー?」

「もちろん嫌よね……。ごめんなさい!」

「声荒げるなよ。とりま、家ン中入れ。ご近所迷惑だ」


 そんなわけで、性悪女こと神谷海凪(かみやかいな)を家の中に入れる。このまま玄関口で喚かれても迷惑だからだ。


「外寒いだろ。コーヒーくらい出してやるよ」

「あ、ありがとう」

「なんでそんな緊張してるんだよ。らしくもない」


 首をかしげながら、神谷のためにインスタントコーヒーを淹れる。彼女とはなんだかんだ長い付き合いだが、あんなに傲慢な女があんなに慎ましそうに座っているのを見るのは初めてだった。


(つか、この世界の違和感の正体をコイツは知ってるかもしんねェ。訊いてみるか)


 思い立ったが吉日である。キッチンからもじもじする神谷のもとへ戻って来た氷狩は、開口一番「なあ、パラレルワールドに行ってみたいって思ったことある?」と、直球すぎる質問をしてみる。


「パラレルワールド? もしかしたらの世界には行ってみたいわ。第三次世界大戦が起きなかった世界とかね」

「第三次世界大戦? なんの話?」

「へ? もう歴史の教科書にも載ってる戦争じゃない。貴方、義務教育受けてこなかったの?」

「中学の内申がオール1だったのは、いまだに忘れられないけどな」

「…………、1から説明しなきゃダメかしら?」

「教えてほしいね。オマエくらいしか頼れそうなヤツいないし」


 神谷はそわそわした態度から一転し、自慢げな表情と態度になった。


「仕方ないわね! 全部教えてあげるわ!」


 *


 まず、この世界がパラレルワールドなのは確定だ。氷狩のいた世界では、2014年に世界中で戦争は起きていないからだ。

 2014年、大国たちの緊張緩和(デタント)が完全崩壊し、中小国をも巻き込んだ世界大戦が勃発。5年間に及ぶ大戦争は、かつて5:5だった男女比率を1:10まで後退させた。どの国も例外なく、男性を兵士として酷使したのである。

 その主たる理由として、〝超能力〟という新たな概念が関わってくるらしい。その異能力が当初男性にしか扱えない代物だったため、男性兵士は使い捨ての兵器として扱われたという。

 やがて戦争は終結。WW1やWW2と違い、どこかの国が敗戦国となることもなく、いわば白紙和平という形で終戦した。男性が減りすぎて疲弊しきった国々に、新たな秩序はつくれなかったのだ。


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