017 だからコイツと仕事したくないらしい
「おっと……」
最前、意思の〝改ざん〟をしておいて良かった、と思う。氷狩はそれをして、ギリギリのラインで攻撃を止めた。
「やるねぇ。オマエ」
そして、柴田雫がベッドから立ち上がった。不敵な笑みとともに。
「なんの能力か知らねえが、あたしは確かに攻撃してたはずだった。そこの突っ立ってるだけの間抜けに」
「ああ。仲間じゃなければ、ぶっ刺してもらっても困らねェんだけども」
「薄情だね。最近の男はそういうのばかりだ」
「悪りィけど、そうならざるを得ないのさ」
8畳ほどの縦に長い部屋。小さなテレビとベッド、湯沸かしポット、おそらく飛ぶときに備えて用意してあったのだろうスーツケースには、多量のカネが入っているはず。
であれば、
氷狩はもっとも近くに置いてあったポットを持ち、湯が入っているのを確認し、即座に彼女の顔めがけて放り投げた。
しかし、相手も手慣れだ。
当たるわけもなく、ガコンッ! という音だけが残る。
「攻撃能力は持ってねえのか?」
柴田雫が低い声でそう嘲笑したとき、
佐田希依が行動を起こす、はずだ。でなければ、なんのために彼女が着いてきたという話になる。
というわけで、
佐田が風の塊──小さい波動を彼女へ向けて撃つ。
されども、その結果は、
「……鉄かなにか? アンタは!!」
柴田雫をその場から動かすこともできなかった。佐田の頬に汗が伝わる。
「ああ、ネタバレは最後までとっておくモンだぞ。さあ、かかってこいよ。クソガキども」
正直、一般人もいるホテル内である以上、派手な攻撃もできない。ましてや、氷狩にはそもそも派手な一撃なんてものすらない。なので、地道に相手を削っていくしかない。
と、考えていたら、
「私がクソガキ? なら、アンタはクソババアだよ……なあ!!」
佐田が歯を噛み締め、足にブースターでもくっつけたかのような速度で、柴田雫との間合いを狭める、未来が視えた。といっても、距離は1~2メートル。これでは壁もえぐれてしまう。
「だから、コイツと仕事したくないんだ」
もう止めようがない。佐田希依という人間が、眉ひとつ動かさず眠っている者の首元にナイフを突き刺し、死体画像をわざわざ見せてくるようなヤツだと知っていれば、誰だってそう思う。
となれば、今回も佐田の殺戮が見られるだろうと、氷狩は壁にもたれかかる。
だが、
『28歳にクソババアとは失敬な』
『げ、へえっ!!』
氷狩が視た未来とは、佐田が首を捕まれ、ぶらぶらと足を動かすものであった。
(佐田が死ぬ? いや、未来は変えられるはずだ……そうだろう!?)
氷狩は拳銃の安全装置を解除し、柴田雫の頭を撃とうとした。
が、照準に佐田が映る所為でエイムが合わせられない。
そして、恐れていた未来が訪れる。
「28歳相手にババアとは失敬な」
「げ、へえっ!!」
今、引き金を引いても佐田に当たってしまう。氷狩の苦難が始まった。
次話で第一章おしまいです。
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