LAST RUN 1
レナに何年生の時に
同じ学校だったか?
質問を続けていたが
はぐらかされたまま
彼女と駅前で別れて
1人歩いて自宅に帰る光は
記憶を呼び戻しているが
レナと同じ学年だった
記憶が思い出せない。
思い出すのは
リナの事ばかりだ。
自宅に着いた光が
机の中から
引っ張り出したのは
シワクチャになった
一枚の紙だった。
ひかるくんへ
いつも、やさしくて
ありがとう。
いつまでも、なかよくしてね。
りな
手紙で名前を確認するが
やはりレナではなく
りなであった。
それに彼女はイギリスに
引越したはずだ。
それに対してレナは
アメリカから日本に
戻ってきた、と聞いていた。
やはり別人か
似た話は、何処にでも
あるものだな?
光は、そう思い
布団を被って寝た。
だが翌朝になっても
昨夜の事が頭に残っていた光は
寝付きが悪い日々を
過ごしたくないので
昼休みにレナを屋上に
呼び出して質問を
する事にした。
『俺と大悟が
同じ学校だった話なんだけど』
光がそう話し出すと
『何?その話は
もう良いって言ったでしょう』と
レナは苦笑する。
『お前の事は
思い出せなかったんだけど』
光が、そう言った言葉を聞いて
レナは、『やっぱり』と
心の中で呟いた。
光は話を続けて
『お前に似た女の子で
リナって子は1年の時に
同じクラスだった』と
光が言った言葉に
レナは
『ヨシてよ、他の女の子との
思い出なんて』
そう言い掛けて
レナの言葉が止まった。
『ちょっと待って』
『その子と一緒だったのは
何学期か、覚えている?』
少し震えた声で
レナが聞くと
『小学校1年の2学期だよ』と
光が答える。
『その子とのエピソードは
何か覚えている?』
更にうわずった声で
レナが聞くと
『色々とあるけど』
『髪の毛が茶色で
外人みたいで
イヤだって
言ってたから』
『俺が墨汁を髪に塗って
大騒ぎになった事とか』
『2人で神社にお詣り
した事とか色々あるな』
『逆に、なんで大悟が
そんな事を聞くんだ?』
そう言いながら
光がレナを見ると
『覚えておいてくれて
ありがとう』
そう言いながら
レナはボロボロと涙を流して
泣いていた。
『もう忘れちゃった、と
思っていた』
そう言って涙を拭きながら
泣きじゃくっている。
『大悟?』
『りな?』
意味が分からない光は
泣いているレナに
近づくと
『俺にも分かるように
説明をしてくれ?』
諭すようにレナに
そう言うと
『分かった』と言って
ポツリ、ポツリと
語りだす。
レナは小学校入学の時には
神戸にいた。
期待に胸を膨らませて
入学した小学校
レナを待っていたのは
イジメであった。
日本人離れした
彫りの深い顔に
茶色の髪の毛
みんなが関西弁を喋る中
レナが喋る関東弁は
お高く見られていた。
教科書を読んでいる時も
イントネーションの違いで
教室内でクスクスと
笑い声が起きる。
小学校入学まで
福岡に住んでいたレナに
この小学校に
知り合いはいない。
小学校で辛い日々を
送っていたレナは
9月から東京に
引っ越す事が決まった。
その時、転校の手続きの際に
レナの両親が学校側に
レナではなく
りなと小学校では
読んで欲しいと
頼んだ経緯がある。
離婚した子供の場合
戸籍上の名前ではなく
旧姓を学校では
使用してくれる事があるので
レナの両親は
学校側に頼んだのであった。
日頃、彼女は両親に
『レナって名前が
外人みたいだから
イジメられるんだよ』
『日本人みたいな名前に
変えて』と言っていた。
だから日本人に多い
『りな』として
東京の小学校では
呼ぶ事にしたのだ。
でも呼称を変えたからと言って
レナの特徴的な見た目は
変わらず
イジワルな男子に
イジメの標的とされたが
東京のレナを救ってくれたのは
正義感の強い1人の少年
早田光であった。
彼は転校生として来た
りなに優しくしてあげて
彼女をイジメた
男子達をチカラで
ねじ伏せて
結果、誰も彼女をイジメる人間は
いなくなっていったのであった。
クラスのみんなと仲良くなり
学校の帰りには
光と2人で神社に立ち寄り
おしゃべりをする毎日
レナにとっての
至福の時であった。
たが、その幸せは
長く続かなかった。
3学期の始まる前の
クリスマスの時期に
父親の転勤で
レナはイギリスに
転校する事が決まったのだ。
レナは泣きじゃくった。
父親に仕事を変えて、と
懇願もした。
だが、それは子供の
ワガママとして受け取られて
聞き入れて貰えなかった。
『光君、私と結婚したい?』
転校が一週間後に迫った
冬の神社で
レナが光に聞いている。
転校を聞いた時に
光もショックで
家では泣いていたが
レナの前では強がって
平静を装っているので
レナは不安になり
『りなは光君と
結婚したいよ』と
作り笑いをして
光に告げた。
それを聞いた光は
照れながらも
『俺も結婚したいよ』と
ソッポを向きながら
答えた。
『なら、誓いのキスをしよう?』
大人になったら
再び再会をして
誰にも邪魔されずに
結婚をしたい。
早く大人になりたい
子供時代の淡い思い出
教会での結婚式にならって
神社でキスをする2人
『私のファ-ストキスを
奪った早田光』
『アナタに会う為に
帰国と同時に
この学校に転校して来ました』
泣きながら笑っている
レナは
そう光に説明をする。
、
全てを聞いた光は
彼女の行動の理由が分かった。
接点のない光を好きな理由
何もしてない光に対して
怒っている理由
早く気付いてよ、と言う
レナのサインであった。
だが光にも言い分がある
『俺の中では
りなで記憶が止まっているから
レナと同一人物だとは
思わなかった』
そう言った光の言葉に
レナは
『ゴメンね』と
笑って答えたのだった。




