映画へのお誘い
『鈴鹿でも優勝出来て
良かったね』
その言葉を聞いて
目が飛び出るくらいに
光は驚いて
すぐにマドカを
廊下の端に連れて行き
『何で知っている?』と
常軌を逸した表情で
問い詰めた。
至近距離で光に
迫られたマドカは
近いよ
そう感じて
ドキドキしていたが
それどころじゃない光は再び
『何で、知っているんだ?』と
彼女に迫り確認をすると
『光君の名前をフルネームで
ググったら記事が、
いっぱい出て来たんだよ』と
説明を聞いて
すぐに自分でもスマホで
検索すると
彼女の言った通り
光のレ-スでの記事が
たくさんヒットして出てきた。
マジか?
光は頭を抱えている。
知らなかった。
マイナーなカテゴリーなので
世間からの認知度は低いと
勝手に思い込んでいたのだ。
それと同時に
『この事を誰かに喋ったか?』と
マドカの両肩を掴んで
確認すると
『光君の夢なんだよね?』
『誰にも言っていないよ』と
ひきつりながらも
彼女は笑顔で答えている。
良かった、バレているのは
マドカだけか
バイク禁止のガイア学院高校では
バレたら退学モノだろう?
イルマ工業のサポートで
世界デビューが見え始めて
まだ外国語を勉強中の身で
退学にはなる訳にはいかない。
突如、天国から地獄に
突き落とされた感覚の光は
『頼むから本当に
誰にも言わないでくれ』と
マドカを拝むようにして
頼み込んでいる。
彼女は元々、喋る気はなかった。
光と秘密を共有出来た喜びの方が
大きかったからである。
だが、うろたえている光を見て
今なら、ムリ目のお願いを
聞いて貰えると思い
『絶対に誰にも言わないから』
『明日、一緒に映画を
見に行ってくれないかな?』と
ダメ元で頼んでみる事にした。
その言葉を聞いた光は一瞬、
『ふざけるな』
そう思ったが
いつ拡散しても
不思議じゃない状況と
マドカを怒らせる事は
得策じゃないと考えて
『分かったよ』と
目を瞑って
承諾したのであった。
『本当?ヤッタ〜』と
彼女は喜んでいる。
『何時、何処で
待ち合わせにする?』
ルンルン気分なマドカとは逆に
ブルーな気持ちの光は
『後で決めよう』と
彼女に提案した後
『ゴメンちょっと
1人になりたい』と
マドカに申し出をして
彼女も笑顔で了解して
『じゃあ、また後でね?』と
廊下から去って行く。
ヤバい事になった。
BlackExpressを
廃業したのは
レ-スに専念する為だが
まだ学生生活は
続けたい。
マドカの雰囲気では
他人に漏らす事はないだろう?
だが悪意ある誰かが
学校に密告したら
退学は間違いないだろう。
バンさんに電話をして
相談するか?
だが光の学校の事を
バンさんに相談しても
意味がない。
悩んだままの光が
教室に入って
自分の机に向かうと
隣の席のレナが
既に登校しており
光が教室に入って来た事を
認識していた。
光が自分の椅子に座り
『フ-』っと
深い溜め息をはいたのと同時に
『おはよう光君』
『ちょっとだけ、イイ?』
そう言って
話しかける。
だが光は
『ゴメン、ちょっとピンチなんだ』
『悪いけど、後でに
してくれるか?』
そう言って机に
覆い被さるようにして
顔を伏せてしまう。
『え?大丈夫?』
体調を心配したレナが
光に近づき確認するが
『大丈夫だから
そっとしといてくれ』
光の今後の
人生を左右する
最大のピンチ
自分の頭の中で
処理出来なくなった光は
考える時間が欲しくて
そう言ってしまった。
だが光との関係が
良い方向に
進展し始めたと
思っていてからの
冷たい態度に
レナはショックを
受けている。
誰にも言わなかった
光の夢を教えて貰った
特別扱い
なのに今の
この接し方は何?
彼女はライトとバンさんに
渡すプレゼントの件を
光に相談したかった。
レナの周りに男性の
知り合いは少なく
東マネージャ-くらいしか
いなかったからだ。
少し様子を見てみよう
レナは、そう決めて
授業に望むが
光は元気がないままだ。
やがて授業が終わり
休み時間になるが
光は、うなだれたままである。
話し掛ける雰囲気じゃないよね?
そう考えていたレナの前に
『光君、起きて?』と
マドカが彼に話し掛けている。
光君に話し掛けない方が良いよ
先日、公開告白の失敗を
目の前で見ていたレナは
心の中でマドカを制止した。
すると光が顔を上げて
『柳瀬か?』と言って
顔を上げた。
え?
柳瀬さんなら
話を聞くの?
レナが驚いていると
マドカはチラッと
レナの方を見た後に
『明日の映画なんだけど
異世界おじさんの劇場版に
行きたいんだけど良いかな?』と
光に聞いている。
映画?
レナが驚いているのを
確認したマドカは
『狛江駅で待ち合わせして
新宿に行く感じで考えているけど
それで良いかな?』
そう光に確認すると
『了解、その予定で大丈夫です』と
レナの目の前で
休日映画のアポを
了承したのであった。




