新しい道
次の日の学校に行ってみると
案の定、レナに元気がない。
昨晩、バンさんとの話し合いが
終わって家に帰った光は
録画してあった
レナが出ている
夕方の生放送バラエティーを
晩御飯を食べながら
見ていたが
心なしか、元気がないように
見えていた。
今日の学校でのレナは
そのままの雰囲気である。
光は、あえて
『おはよう』と
レナに明るく声をかけてみたが
光に気付いたレナだが
『おはよう』と
元気なく返事を
するだけだった。
昨日、帰るまでは
光の彼女と同じ扱いと
思っていた
レナのポワポワしていた
振る舞いとは別人だ。
雰囲気が変わる何かを
話題のキッカケとして
話し掛けようと
光も考えたが
慣れない事をして
ボロを出さないとも
言い切れない。
その日1日は静観して
Black Expressの
ライトの時に
レナの気持ちを
確認しようと決めていた。
そして授業が終わり
公園に着いた光は
バンさんに会うと
『どうやら、廃業する事を
東さんに聞いたみたいで』
『一日中、落ち込んでいたよ』
光は、そうレナの状況を説明する。
『そうか』
バンさんは、そう返事をするが
静かに下を見るだけだ。
そこにトボトボと
元気なさげにレナが
公園に歩いて来る。
『レナさん、今日も
可愛いですよね?』
もはやルーティンになった
バンさんの
褒めちぎりの声を
レナに掛けるが
彼女の反応は
『はい』と弱く鈍かった。
マズいと思ったバンさんは
光に近づき
『テレビ局に行くまでの間に
何とか元気づけろ?』と
耳元で囁き
無茶な事を
光に押し付けてくる。
丸投げで無茶振りな
発言に光が抗議を
しようとしていたが
バンさんはレナの
セッティングを終了して
Black Expressの
後部座席に彼女を
誘導している。
すると催眠術を
かけられた人のように
レナは後部座席に
またがって
ライトの背中に身体を預け
腰に手を回した。
それはチカラなく
腰に手を添えた
だけのものだった。
『もっと、
しっかり握って下さい』
ライトとして冷静に
彼女にそう告げたが
腰に添えられた手は
弱々しいままだ。
『もっと、
しっかり握って下さい』
同じ言葉を光は
レナに語りかけた。
だが、レナのチカラは
変わらなかった。
すると光は
『乗る気がないなら降りろ!』と
レナを怒鳴ったのだ。
ビックリしたレナだが
『乗る気はあります』と
光に即答すると
『コッチはレナさんの命を
預かっているんだよ』
『そんな中途半端な状態だと
振り落とされて
俺らの責任になるだよ』
そう光に言われたレナは
『すいませんでした』と
光に謝り
腰に回したチカラを
ギュっと強くして
抱きついてきた。
それを確認した光は
Black Expressを
走らせて公園を出発する。
走り出すと、いつも
レナが話し掛けてきたが
今日は何も話し掛けて来ない。
少し様子を伺っていた
光だったが
レナから話さないと
感じた光は
『Black Expressの
廃業の事を
マネージャ-さんに
聞いたんじゃないんですか?』と
レナに話し掛けると
『はい』と
レナは小さく返事をする。
『実は、俺もその話を聞いたのは
昨夜なんですよ』と
光が笑いながら説明すると
『え?』と
レナが驚嘆している。
『あの、おっさん
いつも急なんだよね』
そう話す光の話に
レナはビックリしていた。
『昨日、私と話していた時は
ライトさんも聞かされて
いなかったんですか?』
その質問に
『そうですよ』
『昨日、全部の
仕事を終えて事務所に
戻ったら』
『廃業する事に
したからって?』
『何、冗談を言っているの、って
俺も思わず言っちゃって』
『それから事情を聞かされて
納得しましたけど』と
光は語っている。
ライトさんは納得したんだ。
その真実を聞いた
レナは少し寂しくなる。
そして
『絶対に廃業にしないと
ダメなんですか?』
『私のテレビ出演の契約が
一カ月から』
『年末まで、あと6ケ月も
延長になったんです』
『ライトさんとバンさん
お二人にあと半年、
お世話になりたいんです』
レナは正直な気持ちとして
光に頼んでみたが
『レナさん、ゴメン
それは出来ないんだ』と
光は即答で断ってきた。
『そうですか』
光の答えを聞いたレナは
元気なく答える。
ちゃんと説明しないと
納得しないよな?
『マネージャ-さんには
内緒ですよ?』
昨晩、東さんには
廃業理由は伝えていない事を
聞いていた光は
『実は俺達の、この商売が
警察にマ-クされ始めた
みたいなんです』と
先日の話を引き合いに
説明を始めた。
『レナさんも、ご存知のように
俺達は非合法な
運送屋をしています』
『レナさんを乗せていない時は
かなりのスピードを出しています』
『警察を振り切った事も
一度や二度じゃない』
『だから、警察は俺たちを
探していたんですけど』
『先日、バンさんの所に
刑事2人が訪ねて来ました』
『俺達にも日常の生活があるので
この商売を続けられなくなった』
『これが廃業の理由です』
光に、そう告げられた
レナは何も言えなかった。
自分の送迎を続ける事は
犯罪を続けてください、と
お願いしているようなものだ。
『レナさんの送迎以外の仕事は
昨日までで営業終了しました』
『でもレナさんの送迎は
契約が残っているので
残り2週間はバッチリ
送迎しますから』
元気づけるつもりで言った
光のラスト2週間発言は
レナを更に悲しませた。
『もうすぐテレビ局に
着きますよ』
光が、そう言った後
レナは
『ライトさん、一度
お休みの日に会って
頂けませんか?』と
光にお願いをしたのであった。




