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氷姫

バンさんから聞いた

次回の仕事の

配送対象が人間で

しかもアイドル


その事を聞かされた光は

驚きを隠せずに

『バンさん、俺は

タンデムはした事ないよ』と

抗議をするが


『お前は、もう17になったろ』

『免許を取って1年経ってりゃ

問題ないよ』と

笑って取りあってくれない。


『法律的にはOKとかじゃなく

2ケツが危ないって事だよ』と

光は違う意味を言うと


『天下の早田光は

タンデムだとコケるのか?』

バンさんは店の机に

大きな地図を広げながら

光に問いかける。


『俺はコケないよ』

『でも、後ろに乗った奴が

落ちても俺の責任だろ?』


『そいつの行動まで

責任は持てないよ』


バンさんが広げた地図を

見ながら

光が机に近づいていく。


『じゃあ、断るか?』

『俺達には金も時間もない』

『一カ月の契約で

ギャラも良かったから受けた』


『だが、お前に自信がないなら

断るだけだ』

そう言われて光は

黙って考えこむ。


『イギリスにも行きたいんだろ?』

そうバンさんに言われて


『う〜ん』と唸っていた光は


『分かりました』

『やらせて下さい』と

言って

仕事を承諾したのであった。


『仕事の内容を説明するぞ』

そう言ってバンさんは

説明を始めた。


タレントさんは

夕方17時から始まる

関東テレビの生放送に

出演する為に16時までに

テレビ局に着きたい。


タレントさんは

通っている学校が終わる

15時過ぎにバイクに乗って

渋滞を避けてテレビ局に

16時に着きたい


『渋滞を避けるなら

電車の方が良いんじゃないの?』

光が素朴な質問を投げると


『不特定多数が乗る電車だと

ファンに取り囲まれる

可能性もあるし』


『タレントさんは

電車の中で痴漢に遭った事が

あるらしくて』

『電車に乗るのが怖いらしい』と

バンさんが解説した。


すると光が

『芸能人なら、学校を

早退するとか出来るんじゃない?』

新たな質問をバンさんにすると


『タレントさんは学校の授業は

必ず受けたいそうだ』と

また質問に即答する。


『雨が降ったら、どうするの?』

また光が質問すると


バンさんは呆れた顔で

『お前、やりたくないの?』と

光に聞くと


『違う、違う』

『単純に、疑問点の解消です』と

慌て光が弁明した。


『そこは俺も先方に確認したら

レインコ-トで安全運転で

お願いします、との事だ』


その説明を聞いて

光は天を仰ぐ


『対象が通っているのは

私立ガイア学院高校で』


『そこから関東テレビまで

片道30分の片道切符だ』

そこまでバンさんが

言ったところで


『ちょっと待った』

『そこ、俺の通っている学校』と

光がバンさんに言うが


『知っている』と言って

バンさんが説明を

続けようとしたので


『待ってよ、学校に

バイクがバレたら

俺、退学だよ』と抗議をするが


『元々、Black Expressの

仕事だから』

『ヘルメットを取らなければ

絶対にバレないだろ』と言う

バンさんの説明に

光も納得する。


『対象者はモデルでタレントの

大悟レナさんだ』

『事務所からの期待も大きい

新人さんだから

気をつけてくれよ』

そうバンさんか言うが


光は下を向いて頭をかいている。


『どうした光?』

興味を無くしたように

下を向いている彼に

バンさんが聞くと


『大悟レナ』

『そいつは俺と同じクラスだよ』

『通称、氷姫』

そう言うと

困った顔をバンさんに

見せた。


『氷姫?』

『学校が光と同じだったのは

知っていたが』

『まさか、同じクラスとは

思わなかったな』


『結構、仲が良いのか?』

ここに来て

バンさんも心配になったようで

光に確認すると


『ほとんど喋った事はないよ』

『氷姫って、あだ名のように

学校で誰とも喋らない』

『冷たい女だから

見た目は可愛いが

氷姫って呼ばれている』


光が、そう説明すると

『とにかく喋らない』

『ヘルメットは取らない』

『学校でも接点を作らない』


『この方針で、どうかな?』

バンさんが急に

光に気を使うように聞いている。


『バレないように

上手く頑張るしかないでしょ?』


さっきまでと変わって

光の腹はすわったようだ。


『彼女の所属事務所の人間が

俺の昔からのダチで』

『その縁で、今回の依頼が

来ているから』


『上手く説明してみるよ』


バンさんが慌てながら

明日からの仕事の

説明を続けた。


光が通学時に使っている

公園にバンさんが

店のワンボックスで

Black Expressの

バイク、つなぎ一式を

持参して

光のバイクを回収後

ワンボックスの中で

着替えた光が

タレントさんと合流して

テレビ局まで向かう


『一カ月で終わるから

バレずに大丈夫だろ?』

バンさんが笑いながら

光に話すと


『バレないって

Black Expressの事?』

『それともアッチの事?』


冷めた表情の光が聞くと


『両方だよ』

『両方に決まっているじゃないか?』

バンさんが慌て説明した。


光も楽観的に考えていた。


席も離れているし

ほとんど喋った事のない

クラスの女子


同じバイクに乗っても

バレる事など

ないだろうと


だが光は忘れていた。

当日、光のクラスでは

席替えが行われた。


クラスの1番後ろの窓側

いわゆる主人公席に

座る事になった光


そこまでは良かった

だが、光の横の席


そこに座った女子は

チラッと光を見た後

『フン』と言って

違う方向を向いてしまった。


光の隣の席は氷姫であった。



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